4歳の息子が砂場で遊んでいると、一人の男の子が話しかけてきました。息子の口から飛び出した言葉は意外なもの。その後の二人はまさかの状況に発展。周りで見ていた親たちも思わず笑顔になったエピソードです。
突然の「貸して」

まだ息子が4歳くらいのこと。よく晴れた午後、近所の公園の砂場はいつものメンバーで賑わっていました。
息子はお気に入りのお砂場セットを広げて、黙々と砂場で砂遊びに励んでいます。しばらくすると、その日初めて見かけた、息子と同じ年頃の男の子がすっと隣に来て、じっと息子の手元を見つめ始めました。
「それ貸して」
知らない子からスコップや型を指さしてそう言われた息子は、道具を抱えたまま「うーん…」としばらく固まっていました。
4歳児なりに「今使っているものを渡したくない」気持ちと、「でも意地悪はしたくない」気持ちの間で揺れているのが、表情を見ているだけで伝わってきます。
周りにいた私たち大人も、息子の返事を静かに待つ空気になっていました。相手の子も急かすことなく、じっと息子を見ています。
息子は手にした型をぎゅっと握りしめて、下を向いて何か考えている様子。親の私が「貸してあげなさい」というのは簡単ですが、このときは息子の成長のためにと思って、口を出すのをぐっとこらえて、様子を見守ることにしました。
息子の口から飛び出した一言

すると息子は自分が持っていたスコップを相手に渡しました。そして数秒間、沈黙した後こう言ったんです。
「一緒に作ろ?」
いつも控えめで、保育所でも一人で黙々と一つのことに打ち込む姿の多い息子が、知らない子と一緒に何かをしようとすることは初めてでした。
「いいの?」
「一緒に大きいの作った方が、すごいのできる…から」
まさかの提案に、男の子だけでなく、そのお母さんもきょとんとした顔をしていました。私も「その発想どこで覚えたの」と面食らったのを覚えています。
戦隊ものの影響なのか、保育園で誰かに言われたのか、日頃は口数の少ない息子の口からそんな言葉が飛び出したのです。
相手の子は目をぱちぱちさせながら、
「大きいの…?」と聞き返します。
息子はうんうんとうなずきながら、たたみかけるように続けました。
「じゃあ半分こしよう。僕がお城作るから、ここに川を作って」
「川?」
「うん、お城のまわりに川流したら、かっこいいでしょ」
気づけば本格的な共同作業に
相手の子も
「いいよ!やる!」と乗り気になり、そこからは見事な分業がスタートしました。
息子は型を使ってお城の壁をせっせと積み上げ、もう一人の子はスコップで蛇行する川を掘り進めていきます。
「そっちもっと深く掘って!」
「じゃあ水運んでくる!」
「橋もいる?」
「いる!ここに橋かけよう」
最初はぎこちなかった二人の会話も、途中からはすっかり息が合うようになり、いつの間にかちゃんとした共同作業になっていました。
そばの水場からバケツで水を運ぶ係、壁を積む係、橋を組み立てる係と、誰に教わったわけでもないのに自然と役割分担しています。周りで見ていた私たち親同士、「仲良くなったねえ」と微笑ましく眺めていました。
「僕たち、チームなんだよ」

三十分ほどたったころ、二人の共同作業が完成しました。息子たちが作り上げたものは、本格的なお城と、そこに水を引き込んだ川、さらには小さな橋まで。親も思わず「おお」と声が出るくらいの力作です。
息子は砂だらけの手のまま、誇らしげにこう報告してきました。
「見て見て!僕たち、チームなんだよ」隣で相手の子も
「そうそう、チーム!」と胸を張っています。
その一言に、周りで見ていた親たちも思わず顔を見合わせて笑ってしまいました。
「けんかになるかと思ったら、まさかのチームビルディング…」
「見習わないといけない発想、負けそうですね」としばらくその場が和やかな笑いに包まれていたのを覚えています。
家に帰ってからも、息子は得意げで
「今日チームでお城作ったんだよ」と、帰ってきたパパにも話していました。
実はこの頃の息子は同年齢の子たちより話す言葉がおぼつかない事が多く、保育所では一人で遊ぶことが多かったんです。
そんな息子が知らない子に提案をして、一緒に砂場で何かを作って遊ぶ。よくある砂場のワンシーンが、息子の一言で思いがけない協力プレーに変わった出来事でした。
(ファンファン福岡公式ライター/shinobu)





