【KBC】消えない喪失を抱えて歩む母の生きざま描く 海の中道飲酒運転事故から20年 ドキュメンタリー番組8月25日深夜放送

2006年8月25日。「海の中道大橋」で、一家5人が乗った車が飲酒運転の車に追突され暗い海へ転落、幼い3人の命が奪われた痛ましい事故から、今年で20年という大きな節目を迎えます。KBC九州朝日放送(福岡市)は、ドキュメンタリー番組『私の時を進める~海の中道飲酒運転事故から20年~』を制作。8月25日(火)深夜1時40分(26日午前1時40分)に放送されます。取材を担ったのは自ら制作に手を挙げたという島征吾記者(32)。約1年にわたる密着取材を通して島記者が見つめた、亡くなった3人の母親である大沼かおりさんが歩んだ20年が紹介されます。

3人の子どもたちをスクリーンに映しながら講演を行う大沼さん
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密着取材で見えた「飾らない素顔」に救われ

事故後は深い悲しみを抱え、一度は福岡の地を離れていた大沼かおりさん。しかし昨年春、再び福岡へと戻り、講演活動を始めました。「飲酒運転は、自ら選ぶ犯罪です―」と、自身の傷をえぐるような苦痛を伴いながら、これからハンドルを握る高校生たちに向けて懸命にメッセージを送ります。島記者が大沼さんに初めてカメラを向けたのは、昨年7月に行われた博多高校での講演でした。頻繁に連絡を取りつつ、月1回ほどのペースで密着取材を続けてきたといいます。

2006年8月に海の中道大橋で起きた事故発生時の映像

島記者が大沼さんとの接点で大切にしていたのは、「カメラを向けない時間のコミュニケーションをいかに長く取るか」でした。初めの3カ月間は一切カメラを回さず、連絡を取り合って信頼関係を構築していったそうです。「大沼さんは本当に飾らないお人柄で、嫌な顔一つせずに取材を受けてくださり、むしろ私の方が救われることもありました」と島記者は打ち明けます。

「傷を負いつつ発信する生きざまを描きたい」

番組のメインテーマは、「飲酒運転撲滅」という社会的なメッセージだけにとどまりません。島記者が何よりも迫りたかったのは、「20年という月日が、大沼さんにとって区切りになっているのか」、「彼女の時は本当に進んでいるのか」という問いでした。番組タイトルになった『私の時を進める』は、取材の中で大沼さん自身がポロッとこぼした言葉から付けられました。

昨年8月、亡くなった3人との思い出の地へ向かった大沼さん家族

20年という歳月は、ただの数字ではありません。講演活動をしながらも、よみがえる「あの日」の凄惨(せいさん)な記憶に心を削り、体調を崩して苦しんでいる姿を、島記者は間近で見てきました。「傷が完全に癒えることはないと感じながらも、発信し続ける強さや生きざまに迫りたかった」と話します。決して平らではない大沼さんの複雑な胸の内が、画面を通して痛いほど伝わってくるはずです。

3人の子どもたちと、新たに授かった4人の命

番組では、子どもたちの姿も描かれます。事故後に授かった4人の子どもたちに囲まれ、新たな生活を築いている大沼さん。にぎやかな親子の声が飛び交う日常でも、亡くした3人の子どもたちの存在が消えることはありません。「大沼さんの強さを感じるのはどんな場面でも、亡くなった3人の話をしっかりとされるところ。4人の子どもたちと同じように、大沼さんの中で3人の存在は全く変わらないんだなと感じています」と島記者は語ります。

2007年9月に次女・愛子さんを出産した大沼かおりさん

番組には、事故翌年に誕生した次女・愛子さんの出産時の貴重な独自映像も盛り込まれます。新たな命の誕生への喜びと、一緒に食卓を囲むはずの3人がいないという喪失感…。愛子さんはおととし、初めて母親から当時の事故の話を聞いたそうです。母の活動を力強く応援する愛子さんや家族との絆は、視聴者に訴えかけるものがあります。番組では、大沼さんが少しずつ「自分の時」を進めようとする姿も描かれます。番組では、飾らない大沼さんの生きざまを描くことでメッセージを伝えようと試みます。

伝え続ける使命 次世代へ届けるメッセージとは

「これだけ報道を含め啓発が行われていても、飲酒運転はゼロになっていない」。島記者は〝伝え手〟としての葛藤を隠さずに語ってくれました。しかし、「それでも私たちが発信をやめてしまったら、改善することは絶対にない」という強い使命感に突き動かされています。事故から20年がたち、当時の悲惨な事故をリアルタイムで知らない世代も増え、風化が危ぶまれています。

ドキュメンタリー番組の取材を手がけた九州朝日放送の島征吾記者(32)

だからこそ、「これからドライバーになる10代、20代の若者たちに一番みてほしい。そして、1歳の子どもを持つ親として、同じように子どもを持つ親御さんたちにも、家族の温かさや想像を絶する喪失感を知ってほしい」と訴えます。悲しみを乗り越えるのではなく、抱えながら生きる。一人の女性の壮絶でありながらも力強い生きざまを記録したこの番組は、私たち一人一人の心に深く問いかけるものとなるはずです。

■番組情報

『私の時を進める~海の中道飲酒運転事故から20年~』(テレメンタリー2026)

放送日時:2026年8月25日(火)25:40~(8月26日1:40~)

※2026年8月25日16:48~19:00放送の情報番組『ぎゅっと』でも飲酒運転撲滅に関する情報を発信します

九州朝日放送公式HP https://kbc.co.jp

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