まだ夫と交際中だったときの話です。夫と一緒に夕食を作ることになりました。サラダを作るためにレタスを取り出した夫の行動に「待った」をかけた私。それに対して言い返してきた夫の一言にイラッ。普段、言い返すことがない私の言葉に夫もタジタジ。交際中から始まっていた、夫の成長物語です。
生活環境の違い
付き合っていた頃、夫は実家暮らしで家事をほとんどしたことがありませんでした。洗濯も掃除も料理も母親が全てやってくれていたため、「自分はやらなくていい」という感覚がありました。
私は一人暮らしで、当たり前ですが家賃も食費も光熱費も、すべて自分の給料から出していました。食事の準備や掃除も自分で行い、買い物は週に2回くらいで、おおまかに1週間分の計算で買い物をしていました。
初めて2人で立つキッチン

ある夜、夫が急に「今日泊まっていい?」と連絡してきました。夕飯の準備もまだで、一緒に作ろうということになり2人でキッチンに立ちました。
その日のメニューはシンプルなハンバーグとサラダ。夫が冷蔵庫を開け、レタスを取り出しました。買ってきたばかりの大きなレタスの葉をちぎり始め4枚目にさしかかった時、「多くない?」私は2人分にしては多いレタスの枚数にツッコミました。
彼は「サラダってレタス全部使うよね?」私は自分の耳を疑いました。
「使わないよ?」と、何を言っているのかと思いながら返事をしました。2人分のサラダにレタス一玉は、どう考えても多すぎます。
しかも、比較的大きいサイズ。ちぎったレタスは残れば冷蔵庫で傷むだけです。私の頭の中では、レタスは他の日にも使う予定でした。
ところが夫は、きょとんとした顔でこちらを見てから、「ケチケチすんなよ」と笑いながら言いました。その言葉が、どうしても引っかかってしまいました。
「私がケチなのか?」
私はケチじゃない!

しかし、すぐに「ケチなんて言われる筋合いはない」と思い直しました。なぜなら、夫が当時の私の家で食事をするとき、食材費を出してくれたことは一度もありません。食べ終わっても、食器を流しに持っていくことすらなかったのです。
自分の実家のように、あって当然のものとして、私の家で寛いでいました。それを今まで言えなかった自分も悪いです。しかし、この瞬間、限界を超えました。
「これ、元々私が1週間分の食料として買ってあるものなの。ケチとかじゃなくて、こっちにはこっちの計画があるんだよ。それに、余ったら傷むの早いから困るんだけど」
自分でも驚くくらい、落ち着いた声が出ました。夫はぱちぱちと瞬きをして、しばらく何も言いませんでした。部屋に静かな時間が流れて、それから小さく「ごめん」と言い、残りのレタスを冷蔵庫に戻しました。
小さな成長

それ以来、夫は私の家で食事をするとき、ときどき食材費を出してくれるようになりました。食器をすすんで洗うところまではなかなかいかなかったけれど、食器を流しに持っていくようになりました。
あの時「言い返してよかった」と思います。怒鳴ったわけでも、責め立てたわけでもないです。ただ、自分の事情を、自分の言葉で伝えただけです。
自分にとっての当たり前は、他の人にとって当たり前ではないと学んでくれた。この事実が夫にとっては大きかったと思います。そして同時に、黙って合わせ続けることが優しさじゃないということを私は学びました。
(ファンファン福岡公式ライター/高谷 さな)





