久しぶりに乗った電車で目にしたのは、思いがけない出来事の連続でした。高齢者に席を譲る紳士的な男性に好感を抱いたのも束の間、赤ちゃんの泣き声をめぐり車内の空気は一変。誰もが言葉を失う中、その空気を変えたのは、意外にも一人の小さな男の子でした。大人たちが言えなかった“ひと言”に、胸を打たれた体験です。
高齢者に席を譲る好印象の男性

ある日、久々に親友とランチの約束をしていた私は滅多に乗らない電車に乗っていました。就職してから車通勤だったので公共交通機関を使うのは久しぶりでした。
車内は少し混雑気味でしたが、身動きが取れる程度の混み具合。隣の駅から高齢の女性が乗ってきました。少し離れたところに座っていた私は譲ろうかどうしようか少し迷っていました。そのときです。一人の会社員男性がさっと席を立ち高齢女性に席を譲りました。清潔感のある落ち着いた雰囲気の男性は、とても紳士的で好印象でした。
久々に乗った電車で起きたまさかの出来事

次の駅で赤ちゃん連れの女性が乗車してきました。電車の発車と同時に赤ちゃんは大声で泣き出しました。その赤ちゃんは次の駅までずっと泣いていました。
女性は泣き止ませねばという感じで、必死にあやしていましたが赤ちゃんはちっとも泣き止みません。「すみません。すみません」と女性は周囲に頭を下げ、かなり焦っている様子に見えました。
女性を救ったのは
そんなときです。先ほど高齢女性に席を譲った好印象の会社員男性が突然「ちょっとうるさいんですけど?いい加減にしてもらえます?」と言ったのです。思わぬ男性のひと言に電車内の雰囲気は一気に凍りつきました。
女性はひたすら「すみません、すみません」と頭を下げるしかない状況です。周りの人たちも何と言葉をかければ良いのかわからない様子で、しばらく沈黙が続いたのを覚えています。
そんなときです。空気が一変する事態が起こりました。小学生低学年と思われる男の子が「赤ちゃんは泣くものでしょ?普通だよ?」と女性と会社員の男性に言い放ったのです。
心に残った男の子の勇気

男の子のひと言で車内の雰囲気は一気に変わりました。その場にいた誰もが「よくぞ、言ってくれた」と心の中で称賛していたのではないかと思います。
その男の子のまっすぐな言葉は、男性を一撃しました。男性は返す言葉もなく、ただただ気まずそうに黙って下を俯いています。先ほどまでの勢いはすっかり消え、恥ずかしさで顔を真っ赤にし、顔を上げることすらできないようでした。
徐々に車内の空気も元の穏やかな状態に戻りつつあるように感じ私はホッとしました。女性は男の子に向かって軽く会釈をしたあと、ホッとした様子で赤ちゃんを抱き直しあやしていました。男の子は自慢げな態度をとるわけでもなく、ふっと女性に微笑みかけ自分の母親と手をつなぎ窓の外をじっとまっすぐ見つめていました。
大人になると自分の立場やその場の雰囲気を優先し、仮に正しいことであっても口にするのをためらってしまう場面に遭遇します。今回がまさにそうでしょう。おそらく、私も含めその場にいた誰もが感じていたけれど、言葉にはできなかったことをその男の子は何のためらいもなくまっすぐ言ったのです。男の子の勇気ある素晴らしい行動には頭が上がりません。
(ファンファン福岡公式ライター/つきのあ)





