これは、私がスーパーで働いていた頃の体験です。毎日決まった時間に値引きシールが貼られるのを待つ常連客がいて、スタッフの間でも有名な存在でした。そして、値引き時間を変更した日、鳥肌が立つような出来事が起きたのです。
毎日やって来る“値引き待ち”の常連客

以前働いていたスーパーには、13時になると決まって現れる常連客がいました。
60代くらいの女性で、毎日のように、スタッフが値引きシールを貼る時間に合わせて来店するのです。
毎回同じ服装で現れるため、スタッフの間でも自然と顔を覚えられていました。
最初は「よく来るお客さんだな」くらいにしか思っていませんでした。ですが、その距離感に少しずつ戸惑うようになっていきました。
値引き作業が始まると、ぴたりと背後につきます。カートを押したまま無言で立ち、私の手元をじっと見ているのです。
「まだ貼らないの?」
「それ先に貼って」
スーパーでの作業には順番がありますが、時には、急かすように声をかけられることもありました。
そして、そのお客さんは毎回かなり近い距離でシールが貼られるのを待ち構えているのです。
周りのスタッフと
「今日も距離近かったね…」と苦笑いすることも増えていきました。
値引きの時間変更

ある日、店の都合で値引き作業の時間が変更になりました。
これまでは13時でしたが、人手や売り場状況の関係で、夕方へ移動することになったのです。
そして変更初日。いつものように、その常連客がやって来ました。ですが、売り場にはまだ値引きシール商品が並んでいません。
棚を見回したあと、こちらへ一直線に向かってきて
「まだ貼ってないじゃない」と不満そうに言葉をもらしました。
「時間が変更になりました」と事情を説明すると、女性の表情が一気に変わりました。
「困るんだけど!」
空気が張り詰めます。
「今までこの時間だったじゃない!」
「急に変えられたら困るのよ!」
声はどんどん大きくなり、最終的には店長まで出てくることになりました。
店長が出ても終わらない

店長が事情を説明しても、女性の態度は変わりませんでした。
「何時に変更になったのよ!」
値引きのタイミングは業務内容に関わるため、スタッフがお客さんへ伝えることはできない決まりでした。
そのことを伝えてもかなり強い口調で詰め寄ります。店長も困ったように、
「業務内容になりますので、お時間についてはお答えできません」
と繰り返すしかありません。
「そんなの困るわよ!」
女性は不満爆発といった様子で、しばらくブツブツと何かをぼやきながら、店を後にしました。
「そこまで怒ることなの…?」
女性がいなくなってからも、スタッフたちはしばらくザワついていました。
翌日聞かされた話に鳥肌
そして翌日、夕方勤務のスタッフから聞かされた話に思わず鳥肌が立ちました。
誰も時間を教えていないはずなのに、その常連客は新しい値引き時間ぴったりに現れたそうです。
「後ろに気配がして、振り返ったら…いたんだよ!」
そう聞いた瞬間、ゾッとしてしまいました。
結局、その日以降も女性は毎回、同じ時間帯に現れるようになったそうです。
変更後の時間をどうやって把握したのかは、スーパーで働いている間は最後まで分かりませんでした。ただ、値引きシールを貼るたびに背後を気にしてしまうようになってしまいました。
この常連客のことは、スーパーを辞めた今でも強烈に印象に残っています。
(ファンファン福岡公式ライター/大空 琉菜)





