フードコートで食事をしていると、近くの席でひとりジュースを飲む男の子がいました。「ママにここで待っててって言われたの」。私はすぐ迎えに来ると思いました。しかし、時間が過ぎても状況は変わらず…。あの日の出来事は、今でも忘れられません。
「ママにここで待っててって言われた」ひとりで座る男の子

息子が幼稚園年中の頃、休日に近くのショッピングモールを訪れました。買い物の前にフードコートで昼食を取ることにし、息子と向かい合って食事をしていた時のことです。
ふと視線を向けると、少し離れた席で4~5歳くらいの男の子がひとり、静かにジュースを飲んでいました。最初は「保護者が料理を取りに行っているのだろう」と思い、特に気にも留めませんでした。
しかし、時間が経っても大人が戻ってくる気配はありません。周囲を見渡しても、男の子を気にかけている様子の人はいませんでした。
気になった私は思い切って近づき、「ママやパパはどこにいるの?」と優しく声をかけました。
すると男の子は、不安そうな様子も見せず、あっさりと「ママにここで待っててって言われた」と答えたのです。
その落ち着いた様子から、「きっとすぐに戻ってくるのだろう」と思いました。息子も同じくらいの年齢だったこともあり、「少しだけ買い物に行っているのかな」と自分を納得させ、席へ戻りました。
食事が終わっても変わらない光景に胸騒ぎ
息子と食事を終え、トレーを返却しても、男の子はまだ同じ席に座っていました。ジュースを飲み終えた後も、おとなしく椅子に腰掛けたままです。
「さすがに遅くないかな…」
胸の奥に小さな不安が広がりました。
迷いましたが、私がずっと付き添うこともできません。そこで近くの飲食店のスタッフに事情を説明し、「あちらの男の子がずっとひとりでいるようなんです」と伝えました。
スタッフは驚いた様子で男の子の方を見て、「確認してみます」と対応してくださいました。
それでも、その場を離れることには迷いがありました。息子を連れていたため、いつまでもそこにいるわけにもいきません。
「店員さんに伝えたのだから大丈夫だろう」
そう自分に言い聞かせながらも、どこか後ろ髪を引かれる思いでフードコートを後にしました。
1時間後、目にしたまさかの光景

買い物を終えたのは、およそ1時間後でした。
「あの男の子はもうお母さんと帰ったかな」
そう思いながら気になって再びフードコートへ向かうと、男の子は先ほどとほとんど変わらない場所に、ひとりで座っていました。
驚いた私は再び声をかけました。
「ママ、戻ってきた?」
すると男の子は、
「一回戻ってきたけど、またどこか行った」と何気ない口調で答えたのです。
その言葉を聞き、「このままで本当に大丈夫なのだろうか」と不安が一気に強くなりました。
しばらく様子を見ていると、大きな買い物袋を抱えた母親が戻ってきました。男の子は何事もなかったように立ち上がり、母親の後を歩いていきます。
ほっとした一方で、「これで本当に良かったのだろうか」という思いは残りました。
今でも答えが出ない「見守る責任」とは

あの日から何年も経ちましたが、この出来事は今でも鮮明に覚えています。
子育てをしていると、「少しだけ待っていてね」と伝えたくなる場面があることは理解できます。だからこそ、お母さんにも事情があったのかもしれません。
しかし、不特定多数の人が出入りするショッピングモールのフードコートは自宅とは違います。もし男の子が迷子になったら、知らない人について行ってしまったら…。そんな「もし」を考えると、今でも胸がざわつきます。
あの日、私は店員へ事情を伝えることしかできませんでした。それが最善だったのか、母親に声をかけるべきだったのか、今でも答えは出ていません。
ただ、「少しだけだから大丈夫」という感覚と、子どもの安全は決して同じではないと感じています。同じような場面では、一人で抱え込まず、店舗スタッフや施設の担当者へ相談することも大切です。あの日フードコートで出会った男の子は、「子どもを見守る責任」について改めて考えさせてくれました。その問いは今も心に残っています。
(ファンファン福岡公式ライター/haru119)





