息子が小学生だったころの夏休み、家族3人で海水浴を楽しんでいたときのこと。家族で泳いでいると、夫が「背中に気配がする」と言い出します。ふと振り返ると、夫のすぐ後ろで予想もしない不思議な出来事が起こり始めたのです。
家族3人で楽しい海水浴

息子がまだ小学生だったころの夏休み、家族3人で海水浴に出かけました。
その日は雲ひとつない快晴で、目の前に広がる海面が、太陽の光を受けキラキラと眩しく輝いていました。
海に入ると程よい冷たさが心地よく、私たちは時間を忘れて泳ぎを楽しんでいました。
沖に出て、浮き輪でプカプカと浮かんでいたとき、夫が
「なんだか背中に何かの気配がする…」とポツリ。
次の瞬間、夫のすぐ後ろでパシャと小さな水しぶきが上がり、一匹の魚がピョンと海面を跳ねたのです。それは海のレジャーではよくある光景で
「魚いたね」と笑って終わるはずでした。
夫の後ろで繰り返され始めた現象

しかし、息子が叫びました。
「お父さんの後ろばっかり出てくる!」
息子のその一言に、夫も後ろを振り返りました。そこには3匹ほどの魚が泳いでいるのが見えました。
野生の魚は人の気配を感じれば一目散に逃げるはずです。それなのに、その魚たちはどこかへ行くどころか、くるりと綺麗な弧を描きながら交互に跳ね上がることを繰り返したのです。
跳ねたのは子どもの手の平ほどの小さな魚。太陽の眩しい光を全身に浴びて、青白くキラッと輝いて見えました。まるで弁財天の水芸のように、水しぶきとともに放物線を優美に描きます。
その優雅で不思議な光景に目を奪われてしまいました。遠くの沖合で魚が跳ねる光景なら見かけることもありますが、目と鼻の先で、手を伸ばせば掴めそうな距離です。
呆然と見つめる家族3人

「すごい…すごいね!」
魚を驚かせて逃がさないよう、最初は息をひそめ、小さな声で興奮を分かち合っていた私たち。
魚たちが海中に潜るたびに、いなくなったのかな…と思っていると不意をついてまたパシャッと跳ねるのです。何度も何度も、私たちの前で踊るように魚たちが跳ね続けます。なんだか海面を舞台にして遊んでいるかのようでした。
現実離れした、あまりにも美しいその光景に私たちは言葉を失い、ただただ目の前の光景に釘付けになりました。
逃げる気配すら見せず、躍動するように跳ね続ける青白く光る魚たち。キラキラと輝く海の上、パシャパシャと響く水音。周囲の雑音がすーっと消えていき、私たちの周りだけ別の時間が流れているような感覚に包まれました。
「こんなことって、ある…?」
目の前で起きているのにどこか現実味がなく、なんだか、おとぎ話に出てくる竜宮城にそのまま迷い込んでしまったかのような、幻想的で夢のような時間でした。
大切な夏の思い出
どのくらいの時間が経ったのでしょうか。やがて魚たちは静かに海の中へと消えていき、そこには穏やかな夏の海が広がるだけでした。
今でも夏が来るたび、
「あのときの魚、すごかったよね」「なんでお父さんの後ろばかりだったんだろうね」と、この出来事が話題になります。
あのとき目にした青白く光る魚たちの躍動感と、家族3人だけが体験した不思議な空気感は、今も鮮明に記憶しています。
おそらく二度と体験できない、わが家にとってかけがえのない大切な夏の思い出になりました。
(ファンファン福岡公式ライター/hitoyume)





