「今の音、聞こえたよね…」古いクリニックの元病室から“ガタッ”と謎の物音が…ふと思い出した“院長の一言”にゾッとしたワケ

患者さんが落ち着いたクリニックの静かな午後のことでした。同僚と書類を置きに2階へ上がった、その時です。ガタッ。あまりにもはっきり響いた物音に、私たちはその場で足を止めました。同僚と思わず顔を見合わせた瞬間、頭をよぎったのは、入職当時に院長がぽつりと言っていた、あの一言です。

目次

昭和の面影を残すクリニック

写真AC

私が働くクリニックは、昭和47年築の古い建物です。

2階は、昔は入院設備があり実際に使われていたそうですが、今ではすっかり物置と化していて、たまに洗濯物を干しに上がる程度。

使われなくなって久しいはずなのに、置かれた古い医療用の棚や色あせたカーテンはそのままで、昭和の雰囲気が、そのまま時を止めたように残っている場所でした。

以前、当時を知るある患者さんが教えてくれたことがあります。2階は入院用のフロアで、オペ室は今の1階の内視鏡室のあたりにあったそうです。エレベーターがなかったため、オペが終わると患者さんはストレッチャーに乗せられ、そのまま人の手で2階まで運ばれていたのだとか。

その話を聞いてからあらためて今のがらんとした2階を見渡すと、当時の賑わいや慌ただしさが嘘のようで、なんとも不思議な気持ちになります。

今では物音ひとつしない静かな場所ですが、かつては多くの患者さんや医療スタッフが行き交い、たくさんの人生が交差していた場所だったのでしょう。

その日は診察も落ち着いた午後で、溜まっていた書類を2階に置いておこうと、同僚と二人で階段を上がりました。埃っぽい階段を踏みしめながら、特に気負うこともない、いつも通りの何気ない時間のはずでした。

「今の音、聞いた?」二人が同時に固まった瞬間

写真AC

書類を所定の場所に置き、さて1階に降りようとしたその時でした。

「ガタッ」

はっきりとした物音が響きました。空耳ではありません。隣にいた同僚も、同じ音を聞いていました。二人とも、思わずその場で体が固まってしまいました。

「あれ、今の音なに?」

「聞こえたよね、今の…」

顔を見合わせた瞬間、お互いの表情でお互いが同じことを考えているのが分かりました。音は、明らかに病室の方から聞こえてきました。

恐る恐る病室をのぞくと、そこには何の変化もありません。しんと静まり返った昭和の病室が広がるだけでした。ベッドも棚も、物音の原因になりそうなものは、何ひとつ見当たりません。

そういえば院長が言っていた、あの言葉

写真AC

霊感なんてものは持ち合わせていない私ですが、場所には独特の「空気」というものが確かにあると思います。あの音を聞いた瞬間、ふと蘇ってきたのは、入職したばかりの頃に院長からさらりと聞かされていた一言でした。

「2階にはいるらしいよ。でも悪い幽霊じゃなくて、いい霊らしいよ。見える人が言ってた」

その時はまだ入職したてで、右も左も分からなかった私は、「へえ、そうなんですね」くらいに軽く聞き流していました。まさかその言葉をこんな形で思い出すことになるとは、当時の自分は想像もしていませんでした。

結局、あの音の正体はわからないまま

結局、あの音の正体は今もわかりません。でもあの日以来、2階で物音がすると、「もしかしたら…」と思うようになりました。

院長が言っていたように、本当に”いい霊”なのかもしれません。あの古い病室には、長い年月を見守ってきたからこその空気が、今も静かに残っているような気がします。…とはいえ、夕方以降にひとりで2階へ行く勇気だけは、今でもありません。

(ファンファン福岡公式ライター/村上由香里)

記事をシェアする

※この記事内容は公開日時点での情報です。

プロフィール

ファンファン福岡編集部のアバター
ファンファン福岡編集部

ファンファン福岡(fanfunfukuoka)は、街ネタやグルメ、コラム、イベント等、地元福岡・博多・天神の情報が満載の街メディア。「福岡の、人が動き、人を動かし、街を動かす」メディアを目指しています。

タグ

フリーワード検索

目次