第2子を妊娠中、1歳半の長女と一緒に通勤。ずっと抱っこはできない、歩かせるのも時間がかかるので、ベビーカーに乗せていました。通勤は電車で、乗車時間は7分。しかし、長女はベビーカーが大嫌い。いつぐずり出すのかヒヤヒヤしていた時、助けてくれた人がいました。
ベビーカー嫌いの娘との7分間の通勤は綱渡り

2人目を妊娠中も私は子育てをしながら働いていました。職場から歩いて2分ほどの認可外保育園に預ける必要があります。お腹はどんどん大きくなるのに、1歳半になったばかりの長女はまだまだ甘えたい盛りでした。歩かせていたら、抱っこをせがんできたり、駄々をこねたりするので、仕事に間に合いません。そのため、ベビーカーに乗せて通勤することにしました。
乗車時間は3つ目の駅までのたった7分です。子どもでも我慢できる距離のはずですが、長女はベビーカーが大の苦手で、信じられないほどのスピードでぐずり出すため「今日はいつぐずり出すかな」と、毎朝ヒヤヒヤしながら電車に乗り込む日々でした。
私が乗るのは、いつも同じ時間、同じ車両です。ベビーカーがあるから、とにかく端っこにいた方が迷惑にならないと考えて優先席付近に落ち着くのが定番でした。
優先席まわりの”見守り隊”

毎朝のことなので、いつの間にか顔見知りが出来ました。その一人が、60代くらいの女性。私たちが乗り込むと、いつも笑いかけてくれました。
近くに立ったり、隣に座ったりするたびに
「おはよう〜」「今日もママと一緒に偉いね」
長女に話しかけてくれて、それだけで気持ちが軽くなったのを覚えています。長女がぐずりかけた時には、ビニール袋をカシャカシャさせて気をそらせてくれたりもしました。
私たち親子が乗る次の駅から乗ってくる80代の女性も、忘れられない存在です。向かいの席に座ることが多く、少し距離があるのに手を振ったり
「いい子だね〜」と、声をかけたりして長女の気を逸らしてくれました。
ぐずりそうな空気を感じ取って、さりげなく助けてくれていたんだと思います。お二人は、私が降りる1つ前の駅でいつも下車します。
「今日もありがとうございました」と心の中でつぶやきながら見送るのが、通勤の小さな習慣になっていました。
”新聞の男性”のさりげない優しさ

もう一人、毎日顔を合わせていたのが、スーツ姿の60代くらいの男性です。乗り込んだ時にはいつも新聞を読んでいて、正直「今日もいるな」くらいにしか思っていなかった存在でした。
私が降車する駅では、白杖を持った70代の全盲の男性が1人で乗り込んできます。普段は絶好のタイミングですれ違えていたのですが、ある混雑した日、私が降りるのと白杖の男性が乗り込むタイミングがぴったり重なってしまいました。
ぶつかりそうになり、私はとっさに声をかけようとしたのですが、それよりも早く新聞の男性が席を立ち、全盲の男性を「こちらにどうぞ」と空いている席へすっと案内してくれたのです。
その動きに、迷いは一切ありませんでした。きっと、いつもさりげなく気にかけてくれていたのだと感じました。「いるな」くらいにしか思っていなかった自分が、少し恥ずかしくなりました。
誰かが誰かを見守っている
毎朝すれ違うだけの関係だったのに、気づけば私たち親子は、たくさんの人に見守られていました。
声をかけてくれる人、手を振ってくれる人、そして誰も見ていないところでさりげなく動く人。
電車通勤を始めて半年後に保育園が決まり、あの車両に乗ることはなくなりましたが、今でもふとしたときに、名前も知らない、ほんの数分間をともに過ごしただけの「見守り隊」のみなさんのことを思い出します。
コロナ禍での出産で、孤独感が強かった私。そんな私に子育ては家族だけでするものじゃない、と実感させてくれた、忘れられない7分間の思い出です。
(ファンファン福岡公式ライター/高谷 さな)





