「ママ!」と同時に二人から呼ばれる…。子どもが二人いるご家庭なら、そんな経験がある方も多いのではないでしょうか。「ちょっと待っててね」。何気なくかけた言葉の数分後、キッチンで目にした光景に血の気が引いたお話です。
夕方の慌しい時間帯に重なるこどもの声

夕方は、時間との勝負です。
「お腹空いたー!」お風呂から上がった4歳の息子が、タオルを巻いたままキッチンまでついてきました。
「はいはい、今ご飯用意するね」
私は急いで茶わんにご飯をよそい、作っておいたおかずを電子レンジへ。「ピッ」スタートボタンを押したところで、「これで一つ片付いた」と思ったのも束の間でした。
「ママー!」
今度はお風呂場から娘の声です。彼女は小学1年生になり、一人でお風呂に入れるようになったばかり。
「どうしたの?」
「シャンプー! 目に入ったぁー!」
泣き声がどんどん大きくなります。
二人同時に「ママー!」と呼ばれて
「えっ、ちょっと待って!」
娘を助けようと慌ててお風呂場へ向かおうとすると、今度は後ろから息子。
「ママ! お腹ペコペコ…」
振り返ると、お腹を押さえながら今にも泣きそうな顔をしています。私はしゃがんで目を合わせました。
「ごめんね。ちょっとだけ待ってて。すぐ戻ってご飯用意するからね」と声をかけると、息子は小さくうなずきました。
まずは娘を救出

私はそのままお風呂場へ駆け込みます。娘の顔を見ると、シャンプーが額からほほへ流れ落ち、目はぎゅっと閉じたまま。
「痛いー!」案の定、大パニックです。
「大丈夫、大丈夫。動かないでね」と、急いでシャワーで洗い流し、タオルで目元を押さえます。さらに「もう痛くないよ」となだめながら必死に対応していると、少しずつ泣き声が小さくなってきました。
背後に突然響いた大きな音
「よかった…」そう思った、その時です。
「ガタン」
キッチンの方から、何かを置くような音が聞こえました。
(…ん? 踏み台? まさか…)
一瞬気になりつつ、そのまま娘の顔を拭き続けました。次の瞬間です。
「ガッシャーーーン!!」
家中に響く、とてつもない音。
「えっ!?」
胸がドクンと鳴りました。嫌な予感しかしません。娘に「また何かあったら呼んでね!」と言い残し、キッチンへ。そこで目に飛び込んできた光景に、思わず息をのみました。
キッチンには信じられない光景が
床には倒れた踏み台。温めたばかりのご飯は、茶わんごと床に散乱しています。そして、その横で息子が大泣きしていました。
「え…?」駆け寄ろうとして、私は凍り付きました。彼のお腹の上に、電子レンジが乗っていたのです。
「うそでしょ!?」頭が真っ白になりました。
電子レンジの下敷きになった息子

「大丈夫!?」慌てて電子レンジを持ち上げ、息子を抱き起こします。
(どうしよう、救急車!?)息子は涙でぐしゃぐしゃの顔のまま、泣き続けています。
「熱くない!? どこが痛い!?」
わが子が重たい電子レンジの下敷きになっていた…その光景だけで、最悪のことが頭をよぎりました。
骨、折れていない?熱々のご飯はかかっていない?頭を打っていない?どこが一番痛い?次々と体を確認すると、幸い頭にけがはなく、本人も「お尻から落ちた」と話してくれました。
あらためて電子レンジを見ると、扉が開いています。どうやら、その隙間がお腹の上にできたことで、重みが直接かからずにすんだようでした。意識もしっかりしています。
救急車を呼ぶことも頭をよぎりましたが、意識ははっきりしていて、しばらく様子を見ると落ち着いてきたため、その日は受診せずに済みました。
あの日以来、忘れられない一言

あとから息子に聞くと、お腹が空いていたので、温めたご飯を取ろうとして踏み台に乗ったそうです。ほんの数分。娘の目を洗っていた、その間に起きた出来事でした。今でも、あの「ガッシャーン!!」という音は忘れられません。
何気なく口にした「ちょっと待っててね」。あと1分早く戻っていたら…。息子を連れてお風呂へ行っていたら…。あの日以来、その一言の重みを、私はずっと忘れられずにいます。
(ファンファン福岡公式ライター/大空 琉菜)





