スーパーで2歳の娘が突然走り出し、慌てて追いかけた私。その直後、近くにいた年配女性から思わず耳を疑うような言葉を投げかけられ、周囲の視線が一気に気になってしまいました。落ち込みながら娘に謝った次の瞬間、ある人がとった行動に、その場の空気は一変します。私を救ってくれたその行動とは…。
いつものスーパーでの出来事

これは、娘が2歳くらいの頃の出来事です。その日私は、夕飯の買い物をするため娘と一緒に近所のスーパーへ行きました。娘は買い物が好きで、カートを押したがったり、野菜を指さしたりしながら楽しそうについてきます。その日も特に変わった様子はなく、私は必要な食材をかごに入れながら店内を回っていました。
「今日は早めに買い物を済ませよう」
そんなことを考えていた時です。
娘がお菓子売り場を見つけました。すると次の瞬間、
「あっ!」
と声を上げ、ぱっと走り出してしまったのです。
聞こえてきた心ない言葉

私はあわてて娘を追いかけました。幸いすぐに追いつき、大きな事故やトラブルにはなりませんでしたが、周囲の方に迷惑をかけてしまったかもしれません。
私は娘に「急に走ったら危ないよ」と伝えながら、近くにいた人たちにも軽く頭を下げました。その時です。少し離れた場所から、わざと聞こえるような声が聞こえてきました。
「これだから若い母親はねぇ」
さらにもう一言。
「躾がなっていないのよ」
声の主は年配の女性でした。
直接私に話しかけているわけではありません。けれど、明らかにこちらへ向けた言葉だとわかりました。私は思わず体が固まってしまいました。
確かに娘が走ったのは事実です。危ない行動だったし、親として反省しなければならない部分もあります。それでも、見知らぬ人からそんなふうに言われると胸が苦しくなりました。
子育てをしていると、「ちゃんとしなきゃ」と思う場面はたくさんあります。だからこそ、その言葉は想像以上に刺さりました。
謝る私を見た娘が…

私は娘の手を握りながら、
「ごめんね、ママがちゃんと見てなかったね」と声をかけました。
すると娘は不思議そうな顔で私を見上げました。そして突然、背伸びをしながら私の頭をなで始めたのです。小さな手で、よしよしするように。私は驚いて娘を見ました。すると娘はにっこり笑いながら言いました。
「ママ、いいこ」
一瞬、何を言われたのか分かりませんでした。娘はさらに、
「ママ、よしよーし」
といいながら、また頭をなでてくれたのです。それは普段、私が娘を褒める時によく使っている言葉でした。きっと娘なりに、落ち込んでいる私を励まそうとしてくれたのでしょう。その姿があまりにも可愛くて、思わず笑ってしまいました。
周囲がほっこりした瞬間
娘の言葉は私だけでなく、近くにいた人たちにも聞こえていたようでした。近くで商品を見ていた女性がクスッと笑い、「優しい娘さんですね」と声をかけてくれました。
別の方も、「ちゃんとお母さんのこと見てるんですね」と微笑んでくれます。先ほどまで感じていた居心地の悪さが、少しずつ消えていきました。
一方で、嫌味を言っていた女性は気まずそうな表情を浮かべていました。周りの反応が予想と違ったのでしょう。やがて何も言わずに立ち去っていきました。その後ろ姿を見ながら、私は少しだけ肩の力が抜けた気がしました。
娘に救われた忘れられない日

もちろん、子どもが急に走り出したことは反省しています。手をつないだり、カートにのせたり、親として気を付けなければいけないことだったと思います。でも、子どもは時に予想もできない行動をします。どんなに気を付けていても、完璧にはできません。
あの日の私は、周囲の視線や言葉に必要以上に落ち込んでいました。そんなとき、私を救ってくれたのは幼い娘でした。
「ママ、いいこ」
たったその一言で、心の重さがふっと軽くなったのです。
子育てをしていると、親が子供を支えているつもりになりがちです。けれど実際には、子どもから支えられていることもたくさんあります。
今でもあの日のことを思い出すと、少し胸が温かくなります。そして娘が頭をなでながら言ってくれたあの言葉は、子育ての中でも特に大切な思い出として心に残っています。娘のやさしさに救われた、忘れられない一日でした。
(ファンファン福岡公式ライター/言ノ葉えり)





