救急病棟に配属された、どこか要領が悪く見える新人看護師。周囲からは「遅い」「使えない」と厳しい目を向けられていました。しかし、ある日運ばれてきた外国人患者への対応で、その評価は一変します。誰もが戸惑う中、彼女が見せた意外な一面とは。先入観の怖さと、本当の実力に気づかされた出来事を振り返ります。
要領が悪い新人看護師
私が看護師として病院で働いていたときのことです。4月になり新人看護師が新たに配属されてきました。救急病棟の配属だったのですが、その新人は救急病棟には少し相応しくなさそうなタイプの子でした。というのも救急病棟は一分一秒を争う迅速かつ的確な判断が必要とされる部署。しかしその新人はおっとり、のんびりしていて中々仕事の覚えも早いとは言えない子でした。
大きなミスこそはありませんが、要領が悪い子扱いをされていました。年配看護師はチクチク意地悪な言葉をぶつけ、裏で噂している他のスタッフもいました。その新人は部署で少し浮いているようでした。
丁寧さがあだとなり「出来ない子」扱い
わからないことは必ず確認し、ひとつひとつ丁寧に業務をこなしていましたが、救急の現場ではそれが「遅い」「使えない」と思われることも。スタッフの中には「なんでもいちいち確認せず自分で考えてテキパキ動きなさい」などと言葉をぶつける人もいました。
一緒に入職した同期の子は要領の良い子だったので、その子と比べられて余計に「出来ない新人看護師」扱いされていたように思います。その子も段々居心地が悪くなってきたのか、昼休みなど他のスタッフとあまり話をすることはなくなりました。
まさかの外国人患者のスムーズな対応

ある日、外国人患者が救急搬送されました。突然の対応に現場の空気が一気に慌ただしくなり、スタッフは皆あたふた。英語が少し話せるスタッフもいましたが、片言程度しか話せないため意思疎通ができずパニックになっていました。
患者は意識こそはあるものの、痛みのせいで小さな声しか出せず何を言っているのかも聞き取りにくい状況でした。このままでは正確な情報が得られず医師にも報告ができません。
そのとき、まさかあの新人が流暢な英語でテキパキ対応したのです。落ち着いた様子で話しかけ症状を確認していました。的確な問診と患者への優しい言葉がけ。英語がわからない私でも、新人の彼女が適切な対応をしていることはやりとりの雰囲気から読み取れました。気づけばあれほどパニックでざわついていた病棟の空気が落ち着いていました。
能ある鷹は爪を隠すと思った出来事

あの出来事をきっかけに周囲の彼女を見る目や対応が変わりました。嫌味を言っていたスタッフたちもコロっと対応を変え、その新人を大賛称するようになります。でも新人は自慢するわけでも、偉そうにするわけでもなく今まで通り真面目に丁寧に仕事を頑張っていました。
新人の「どのような状況でも困っている人がいれば助けるのが私たちの仕事です」という言葉に皆、何も言うことができませんでした。それ以降、その子に嫌味を言ったり陰口をいったりするスタッフはいなくなりました。その新人は幼少期から海外に住み英語が堪能だったようですが、そんなことを誰にも自慢していませんでした。能ある鷹は爪を隠すとは、まさにこのことかと思った経験です。
(ファンファン福岡公式ライター/つきのあ)





