「ギャー!G!!」プシュー!黒い影に殺虫剤を噴射→まさかの正体に息子が号泣した理由

カサカサと動く黒い影、反射的に手に取った殺虫剤。仕留めたはずが、よく見るとそれは「G(ゴキブリ)」ではありませんでした。動かなくなった愛虫を見て、号泣する息子へひたすら謝罪した、母としての苦い夏休みの大失敗エピソードです。

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「やっつけた!」と確信した次の瞬間

「ひゃっ…!」 視界の端を、黒い影がカサカサと横切りました。心臓が跳ね上がり、反射的に棚から殺虫剤をつかんだ私は、狙いを定めて全力ダッシュ。白い霧が「プシューッ!」と へ広がった瞬間、私は確信していました。

…やっつけた。

ところが、よくよく見ると床に横たわっていたのは、ゴキブリではありませんでした。

ツヤのある丸い体、力強い六本の脚。息子が毎日「手のひらに乗っけて観察していた」、カブトムシのメスだったのです。

「えっ、嘘でしょ…?」

飼育ケースの中にいたはずの命が、私の早とちりによって変わり果てた姿になっている。背中を、嫌な汗がつたいました。

虫かごが一つ、また一つと増えていく少年の夏

写真AC

あの夏、息子は小学校低学年でした。彼の世界は、近所の公園や林で見つける昆虫たちに夢中。セミ、バッタ、カマキリ。捕まえるたびに「これ、分けて入れなきゃダメなんだよ」と、玄関には虫かごが一つ、また一つと並んでいきました。

そしてついに「カブトムシを飼いたい!」という切実な願いが芽生えます。

山でクヌギの木を探し、じっくりと観察したり、蜜を塗ってみたりもしましたが、昆虫の王様はそう簡単には姿を現してくれません。

結局、ペットショップで一対のつがいを迎えました。立派な角を持つオスと、少し小ぶりで愛らしいメス。息子は飼育ケースに昆虫マットを敷き詰め、ゼリーをセットし、のぼり木を丁寧に配置します。その一連の作業を終えて、宝物を扱うような手つきで、カブトムシを手のひらにのせた息子の顔は、誇らしさに満ちていました。

あんなに大切にしていたのに。私は、その命に殺虫剤をかけてしまったのです。

「どうして、お母さん」飼育ケースを前に、号泣する息子

帰宅した息子に、私は正直に打ち明けました。

「ごめんね、ゴキブリと間違えて、カブトムシに殺虫剤をかけてしまった」

言葉が終わるか終わらないかのうちに、息子は飼育ケースへと駆け寄りました。蓋を開けると、そこには悠々とゼリーを食べるオスの姿しかありません。メスはいつの間にか脱走し、部屋の隅を歩いていたところを最悪のタイミングで、私が見つけてしまったのです。

「うわぁぁぁん!」

部屋中に響き渡る息子の泣き声。私は何度も、何度も謝りました。大の大人が、小学校低学年の子どもに、これほどまでに謝り続けたことがあったでしょうか。息子は声が枯れるほど泣き続け、私はただそばで泣き止むのを待つしかありませんでした。

それでもオスを見つめる、息子の優しさ

写真AC

「…また、新しいカブトムシを買いに行こう?」涙でぐしゃぐしゃになった息子の顔をのぞき込みながら、私はそう提案しました。 しゃくり上げながらも、息子は静かにうなづきました。納得してくれたのか、私の申し訳なさそうな顔を見て、気を使ってくれたのかもしれません。

しばらくして、息子は残されたオスをじっと見つめて「もう逃げないように、気をつけよう」と言いました。

その小さな背中を見て、胸が締め付けられました。傷ついているはずなのに、残った一匹を守ろうとしている。この子の優しさに、私は救われました。

今でも黒い影を見ると、私は殺虫剤を構える前に、一瞬だけ立ち止まって確認するようになりました。あの大失敗は、私の中に「一呼吸置くこと」の大切さを刻み込んだのです。

アルバムには今も、新しく買い直したカブトムシと並んで笑う、少し誇らしげな息子の写真が残っています。

(ファンファン福岡公式ライター/hitoyume)

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