春からの新生活のための「保育園の入園説明会」。初めて子どもを預ける保護者にとっては、園の雰囲気を知るための一大イベントです。今回は、そんな入園説明会の日に、他の子どもたちとは少し違った、予想外のタイミングで大号泣してしまったわが子のエピソードをお届けします。
「ママと離れたくない!」別室へ向かう子どもたちの涙
その日は、抱っこ紐で眠る赤ちゃんから、元気に歩き回る2歳児クラスの入園予定児まで、多くの親子が園舎に集まっていました。
受付を済ませると、先生から「保護者の方はホールへ、お子様たちは遊具のある別室でお預かりしますね」と案内がありました。親がしっかりと集中して説明を聞けるようにという、園側の温かい配慮です。
しかし、子どもたちにとっては大事件。「ママがいい!」「一緒に行く!」と、あちこちから一斉に泣き声が上がり始めました。大好きな母親の服の裾をぎゅっと握りしめて離さない子、床に座り込んで激しく抵抗する子。別室への短い廊下は、まるで小さな戦場のようでした。
わが家の娘はというと、周りの大号泣に圧倒されたのか、一言も発さずに私の手を握っていました。その顔は少し不安げです。「大丈夫だよ、おもちゃがたくさんあるお部屋で先生と遊んで待っててね」と優しく声をかけ、先生に手を引かれて別室へと進む後ろ姿を、私は見送りました。
静まり返るホールと、わが子の意外な「適応力」

子どもたちが別室へ移動したあと、ホールは打って変わって静まり返りました。園長先生からの挨拶に始まり、園の教育方針、毎日の持ち物、アレルギー対応、そして保護者会についてなど、重要なお話が次々と進んでいきます。メモを取る保護者の皆さんの表情も真剣そのものです。
説明会の最中、時折、隣の別室から「うわーん!」と子どもたちの泣き声がかすかに響いてきました。「うちの子、まだ泣いているのかな…」「寂しくておもちゃどころじゃないかもしれない」と、気が気でない時間を過ごした保護者は多かったと思います。
約1時間の説明会がつつがなく終了し、いよいよ子どもたちを迎えに行く時間になりました。別室の扉を開けると、そこには驚くべき光景が広がっていました。さっきまであれほど泣いていた子どもたちの多くが、先生に絵本を読んでもらったり、ブロックで遊んだりして、すっかり落ち着いていたのです。
わが子を探すと、部屋の真ん中で、大きな滑り台の遊具に夢中になっていました。不安そうだった表情はどこへやら、満面の笑みで何度も滑り台を往復しています。「あれ?思ったより全然平気だったみたい。しっかり馴染めてよかった!」と、私は胸をなでおろし、わが子の成長を頼もしく感じていました。
楽しい時間は突然の終わりへ、静寂を破る大号泣!

「はーい、みんなお片付けの時間ですよ。お父さん、お母さんがお迎えに来てくれましたよ」
先生の優しい声が部屋に響きました。親たちを見つけた子どもたちは、「ママ!」と嬉しそうに駆け寄っていきます。私も娘に近づき、「お利口に待てたね、お家に帰ろうか」と声をかけました。
その瞬間でした。娘の顔がみるみるうちに真っ赤になり、「いやだあああああ!」と、本日一番の大音量で大号泣が始まったのです。
周りの親子が驚いて振り返るほどの激しさでした。母から離れるときは一滴の涙も見せなかったわが子が、なんと「お家に帰るタイミング」で大爆発してしまったのです。
理由は明白でした。別室にあった魅力的な室内遊具や見たことのないおもちゃの数々に、すっかり心を奪われてしまった娘にとって、お迎えの時間は「楽しい楽園からの強制退場」を意味していたのです。
「もっと遊ぶ!」「まだ帰りたくない!」と言わんばかりに、のけぞって暴れるわが子。他の子が笑顔でお母さんと手をつないで帰る中、私は汗だくになりながら、暴れる娘を文字通り「お米袋」のように抱えて園をあとにすることになりました。
想定外の涙が教えてくれた、ちょっと前向きな春の予感

入園前の大泣きといえば「親と離れるのが寂しい涙」ばかりを想像していましたが、まさか「楽しすぎて帰りたくない涙」になるとは、完全に想定外でした。
しかし帰り道、泣き止んでトボトボ歩く娘の姿を見ながら、「これだけ保育園を気に入ってくれたなら、春からの登園もきっと楽しく通ってくれるに違いない」と、少しだけ前向きな気持ちになれた、そんな忘れられない入園説明会の一幕でした。
(ファンファン福岡公式ライター/たまゆら)





