「えっ、なんでうちを撮ってるの?」見知らぬ人がわが家にスマホを向ける姿を見て、不安になった私。ところが、その場で知った理由は予想外のものでした。筆者の忘れられない体験をお話します。
不審な光景

ある日の夕方、下の子を保育園へ迎えに行き、自転車で自宅まで戻ってきたときのことです。そこには見知らぬ女性が二人、わが家の前に立っていました。
人通りの少ない住宅街です。自宅の前に知らない人が立っているだけでも気になったのですが、さらに驚いたのはその様子でした。
一人は、うちの駐車場をのぞき込むようにじっと見ています。そして、もう一人はスマートフォンを構え、玄関前を撮影しているではありませんか。
(えっ、なんでうちを撮ってるの?)
思わず自転車の速度を落として近づくと、一瞬だけスマホの画面が目に入りました。映っていたのは玄関前の地面と黒っぽい何か。何を撮っているのかは分かりません。
勝手に家を撮影されていることに戸惑い、不安が一気に膨らみます。私は自転車を止め、「何を撮っているんですか?」と少し強めに声をかけました。
思いもよらない理由にびっくり

驚いた表情で振り返った女性、しかし、本当に驚かされたのは私の方でした。
「カルガモの親子がいるんですよ!」
思いもよらない返事に、「えっ?」と声が漏れます。
言われるまま車の下を見ると、じっと身をひそめる親ガモと、その後ろから黄色くフワフワなヒナがピョコッと顔を出したのです。
「えーーー!!」
住宅街の真ん中でカルガモの親子を見るなんて、思ってもみませんでした。
あまりの珍しさに写真を撮っていたという女性たちの話を聞き、さっきまで「不審者かもしれない」と身構えていた私は、一気に力が抜けたのでした。
助けたい気持ちと戸惑い
女性によると、カルガモの親子はすでに1時間近く近所を歩き回っていたそうです。このまま大きな道路へ出てしまえば、車にはねられてしまうかもしれません。
「何とか近くの川まで行けるようにできないかと思って…」
警察へ相談し、その後は動物愛護センターにも問い合わせたそうです。ところが、警察では対応できず、動物愛護センターも受付時間が終わっていました。
さらに、善意でも一般の人が勝手に捕まえて移動させることはできないと知り、結局、私たちにできるのは静かに見守ることだけだと分かったのです。
私は自転車をできるだけ親子から離れた場所へ止め、息子と一緒に様子を見守ることにしました。
どうか無事に川へ着きますように

息子は地面にしゃがみ込み、「かわいい!」とはしゃぎながら親子を見つめています。ヒナたちは少し出てきては、車の下へ戻るのを繰り返していました。その小さな姿を見ていると、誰も近づいて驚かせることはできません。
しばらくすると、親ガモがゆっくり歩きはじめました。それに続くようにヒナたちもピヨピヨと一列になって車の下から出てきます。
「どうか無事に川までたどり着いてね」
その場にいた全員が、同じ気持ちだったと思います。
私は習い事を終えた上の子を迎えに行く時間も迫っていたため、 カルガモ親子が無事に目的地へ着いてくれることを願いながらその場を離れました。
最初は「なんでわが家を撮影しているの?」と警戒していた私。しかし、その視線の先にいたのは、まさかのカルガモ親子。住宅街で起きた、今でも忘れられない出来事です。
(ファンファン福岡公式ライター/大空 琉菜)





