私は、ぎっくり腰でまったく動けなくなったことで、家族それぞれの意外な一面を知ることになりました。頼りになると思っていた夫と、手のかかるはずの子どもたち…。思わず愕然とした出来事が忘れられません。
初めてのぎっくり腰

娘が中学1年生、息子が小学5年生だった頃のことです。
朝、床に落ちたものを拾おうと前かがみになった瞬間、腰に「ビキッ!」という強烈な痛みが走り、一歩も動けなくなりました。
冷や汗をかきながらもなんとか病院へ行くと「ぎっくり腰ですね」と診断されました。
コルセットと湿布を処方してもらいましたが、ちょっと体を動かすだけでも腰に激痛が走ります。帰宅してから私はリビングのソファーに横になり、ただ痛みに耐えるしかありませんでした。
しばらくすると、小学5年生の息子が学校から帰宅しました。ソファーで動けずにいる私を見て「どうしたの!?」とびっくりした様子。
ぎっくり腰で動けないことを説明すると、息子は少し考えてから「夕飯は僕に任せて」と言ってくれたのです。
息子は最近料理に興味を持っていて、夕飯のおかず作りを手伝ってくれる事が多かったのですが、1人でやらせたことはありませんでした。正直、「大丈夫かな」と心配でしたが私には何もできません。
私の心配をよそに、ご飯を炊き、冷蔵庫にあった豚肉で生姜焼きを作り、さらに前日に家庭科で習ったばかりだというゆで卵まで1人で作ってくれました。
そして、起き上がることすら難しい私のために、不格好ながらも一生懸命握ったおにぎりを持ってきてくれたのです。私の状況を考えておにぎりを作ってくれたことが嬉しくて胸がいっぱいになりました。
さらに部活動を終えて帰宅した中学1年生の娘も「あとは私がやるから」と普段は「手伝って」と言っても何もしないのに今日は違います。
食器の片付け、お風呂の準備、洗濯まで進んで引き受けてくれ、姉弟で声を掛け合いながら家のことをどんどんこなしてくれました。
私は「こんなにいろいろな事ができるようになったんだ」と、子どもたちの成長に驚きながら感謝の気持ちでいっぱいになりました。
夫はというと

そんな感動の空気を一変させたのが、仕事から帰宅した夫です。ソファーに横たわる私を見るなり、怪訝そうな表情に。ぎっくり腰で動けないことを説明しても、いまいち大変さが伝わっていない様子でした。
その後、トイレに行きたくなった私は
「お願いだから手を引いて起こして」と夫に頼みました。
「いいよ」と快く引き受けてくれたのですが、あろうことか体を半分ほど起こしたところで
「うぇーい!」と楽しそうに言いながら、突然手を放したのです。当然、私はまたソファーへ倒れ込み、腰には激痛が走りました。
「何するの!本当に痛いんだからやめて!」悶絶しながら抗議すると、夫は「ごめん、ごめん」と笑いながら謝ります。
もう一度手を貸してもらうと、また同じことを繰り返したのです。あまりの思いやりのなさに
「こんな時にふざけるなんて最低!」と怒りましたが、夫はニヤニヤしていて話になりません。
食器を拭いていた息子が慌てて駆けつけてくれました。息子はしっかり体を支えて起こしてくれ、無事にトイレに行くことができました。一連の様子を見ていた娘と息子から
「最低!」「信じられない!」と冷たい視線を向けられ、さすがの夫も気まずそうに。
子どもたちの頼もしさ

それから3日ほどかけて、痛みが少しずつ和らぎ、無理をすれば何とか動けるようになりました。その間、ずっとそばにいてかいがいしく私の世話をし、家事を代わってくれたのは2人の子どもたちです。
夫も初日のおふざけは反省したようでしたが、その後私から何かを頼むことはしませんでした。夫は、家事を分担する子どもたちに「これはお父さんがやる」と言っても、
「お父さんはロクなことをしないから手を出さないで」と拒否され続けたそうです。
あのぎっくり腰で私が痛感したのは、「頼りになる人は年齢では決まらない」ということ。私が困った時に本当に支えてくれたのは、大人の夫ではなく、まだ手がかかると思っていた子どもたちでした。
子どもたちには一生懸命頑張ってくれたお礼においしいケーキをご馳走しました。あんなに家事ができるのであれば普段からもっと手伝って欲しいと思いましたが、私が元気になると元に戻ってしまいました。
(ファンファン福岡公式ライター/ひとみ)





