娘が生まれて育休に入った私。夫は「家にいるんだから暇でしょ?」と言って、自分の店の仕事を次々と私に手伝わせていました。娘の世話をしながら無休で働く生活に限界を感じた私は、実家へ帰省。そこで初めて、夫は私が担っていた負担の大きさを思い知ることになりました。
育休中なのに休めない毎日

娘が生後数カ月のころ。私は育休中で、毎日娘のお世話に追われていました。授乳におむつ替え、寝かしつけ。ようやく寝たと思ったらすぐに泣きだし、自分の食事さえゆっくり取れない日も珍しくありません。
夫は自営業で小さなお店を経営していました。育休中の私に「少しだけ手伝ってくれる?」というお願いをしてきたのです。最初は、伝票の整理や簡単な入力作業など、自宅でできるものばかりでした。
私も夫の仕事を応援したい気持ちがあったので、「これくらいなら」と引き受けていました。しかし、その”少しだけ”は徐々に増えていったのです。気づけば、配達中の夫からの仕事の連絡が毎日のように来るようになりました。
「この資料まとめておいて」「お客さんに返信しといて」「発注もお願い」
それらはすべて無給です。私は娘を抱っこしながらパソコンを開き、寝かしつけの合間に作業を進めていました。
夫は当然のように仕事を頼んできます。ある日、「ちょっと大変だから量を減らしてほしい」と伝えた時のことです。夫は不思議そうな顔でこう言いました。
「でも家にいるんだから暇でしょ?」
その瞬間、頭が真っ白になりました。
育児をしている人ならわかると思いますが、小さな子どもがいる生活に”暇”なんてありません。むしろ仕事をしていた頃より忙しいと感じることもあります。それなのに夫は、私が家でのんびりしていると思っていたのです。悲しいというより、悔しい気持ちでいっぱいになりました。
限界を迎えた私

私もしばらくは我慢しました。ですが、娘のお世話と家事、そして夫の仕事をこなす生活は想像以上に負担が大きく、心も体も限界に近づいていました。
ある日、娘を抱っこしながら夫の仕事をしていた時、ふと涙が出てきたのです。
「なんで私はこんなに頑張っているんだろう」
そう思った瞬間、この生活を続けるのはもう無理だと感じ、その日の夜、私は夫に伝えました。
「少し実家に帰るね」
「いってらっしゃい」夫は軽く言いました。
きっと数日で戻ると思っていたのでしょう。ですが私には戻るつもりはありませんでした。実家に帰ったら、夫の仕事を一切引き受けず、娘と一緒にゆっくり過ごすことにしたのです。
困り始めた夫
実家へ帰って数日後。夫から連絡が来ました。
「資料どこ?」「発注どうすればいい?」「お客さんへの返信間に合わない」
実家に戻ってから私はこれまで夫に頼まれてやっていた仕事を一切していません。
当然ですが、その分の業務はすべて夫自身が対応しなければならなくなりました。夫も最初はなんとかなると思っていたようですが、次第に余裕がなくなっていったようです。電話の向こうからも疲れた様子が伝わってきました。
そして数日後、夫から珍しく謝罪の言葉が送られてきたのです。
「今まで本当にごめん」「こんなにたくさんのことをやってくれていたとは思わなかった」「育児しながらやる量じゃなかった」
そのメッセージを見たとき、少しだけ胸のつかえが取れた気がしたので、自宅に戻ることにしました。
ようやく理解してくれた夫

家を出てから10日後、帰宅すると、夫は改めて頭を下げてくれました。私が普段どれだけ忙しかったのか、どれだけ負担を抱えていたのかを初めて理解したそうです。それ以来、夫は仕事を当然のように押し付けることをやめました。
娘のお世話にも積極的に参加するようになり、「大丈夫?休めてる?」と声をかけてくれるようにもなりました。もちろん、一度で完璧に変わったわけではありません。それでも、私の状況を理解しようと努力してくれるようになったことは大きな変化でした。
育休は単なる休暇ではありません。子どもの命を守りながら生活を回す、大切な仕事があります。思い切って実家へ帰り、自分の限界を伝えたからこそ、夫も現実を知ることができたのだと思います。今では夫婦で協力しながら子育てをしています。
振り返ると大変な時期でしたが、あの出来事は私たち夫婦が本当の意味で支え合うきっかけになった経験になりました。
(ファンファン福岡公式ライター/言ノ葉えり)





