イヤイヤ期の2歳児と新幹線に乗車中、ぐずりから大泣きへ。周囲の視線や咳払いに焦り、どうしていいかわからなくなる私。そんな中、見知らぬ女性の思いがけない一言で空気が一変しました。あの日、私が救われた出来事をお話しします。
2歳児との新幹線移動、最初は順調だった

長男が2歳のころ、イヤイヤ期の真っ只中でした。私は息子と2人で、新幹線に乗って友人の家へ向かっていました。乗車時間は約2時間。大人にとってはあっという間でも、2歳の子どもにとっては長い時間です。
最初の1時間は順調でした。おやつを食べて、折り紙をして、動画も見て。「意外と2時間いけるかも」と、少し安心していたのを覚えています。でも、やっぱりそう上手くはいきませんでした。
ぐずりから大泣きへ…周囲の視線に追い詰められて

だんだんと息子は落ち着かなくなり、体をくねらせながらぐずり始めました。眠気も重なって、声は少しずつ大きくなっていきます。周りの乗客の視線が、ちらちらとこちらに向くのがわかりました。前の席のサラリーマンが、何度か咳払いをします。
「まずい…」そう思って、デッキに移動しようと息子を抱き上げようとした瞬間でした。「いやっ!!さわらないで!!」とでも言うように息子に全力で拒否され、体をのけぞらせて泣き叫びます。
どうしよう。抱っこもさせてくれない。ここから動けない。でも、このままじゃ迷惑をかけてしまう。焦れば焦るほど、頭が真っ白になっていきました。
今なら「強引でも抱っこをして一旦デッキに行こう」と割り切れるのに、当時の私は、周囲の雰囲気に焦ってしまい、拒否する息子にどう対応していいのかわからず、立ち尽くしてしまいました。
もう限界かもしれない。そう思った、そのときでした。
「ママ、ちょっといい?」空気が変わった一言

通路を挟んだ向かい側に座っていた女性が声をかけてきました。
「ママ、ちょっといい?」
怒られるかも。一瞬、そう身構えた私に、その方はにっこり笑って続けました。
「この子、動物好き?」
そしてカバンの中から小さなぬいぐるみを取り出したのです。手のひらサイズのクマでした。さっきまで泣き叫んでいた息子が、ぴたりと泣き止みます。
「くま…」
小さくつぶやいて、ぬいぐるみに手を伸ばしました。女性はさらにカバンの中から、いくつもの動物のぬいぐるみを取り出し、テーブルの上に並べてくれました。
「私ね、孫に会いに行くの。動物が好きでね、張り切って作ったのよ」そして女性はこう言いました。
「私、もうすぐ降りるの。ボク、好きなのひとつあげる。どれがいい?」
息子は迷わず答えました。
「このクマちゃん」
「じゃあそれあげるね。新幹線降りるまで、その子と仲良くしてあげてね」
あの日、救われていたのは私だった
そのあと息子は、クマのぬいぐるみを大事そうに抱えながら、静かに過ごしてくれました。さっきまでの空気が嘘のように、穏やかな時間が流れていました。
あのとき、周囲の視線や音に焦り、どうしていいかわからなくなっていた私は追い詰められていました。
「なんとかしなきゃ」「迷惑をかけちゃいけない」そう思うほど、余裕はなくなっていきます。そんな中で、あの女性は私たちを責めることなく、ただ自然に手を差し伸べてくれました。
子育てをしていると、「ちゃんとしなきゃ」と思う場面がたくさんあります。でも、本当にしんどいときは、誰かの優しさに助けてもらってもいいのかもしれません。
あの日にもらったクマのぬいぐるみは、今でも家にあります。それは、息子を泣き止ませてくれた存在であると同時に、あのときの私を救ってくれた、小さな優しさの記憶でもあります。
(ファンファン福岡公式ライター/irone)





