中古で戸建てを購入したわが家。購入時、地域の12棟でゴミ捨て場の掃除当番を1週間ごとに回すと聞いていました。しかし、一度当番を終えた後は何カ月待っても回ってきません。理由が分からないまま不安を抱え続けた私が、2年後に知った思いもよらない真相とは…。
新生活が始まってもご近所付き合いがない

子どもが生まれる直前に、中古で戸建てを購入したわが家。
そこは約10年前に12棟まとめて建売されていた住宅地で、ご近所さんは私たち夫婦より一回り以上年上の方ばかりでした。すでにご近所コミュニティはできあがっており、引っ越したばかりのわが家は少し浮いているように感じました。
ご近所さんとは生活リズムも違っているのか、引っ越しのあいさつ以降はほとんど顔を合わせることもありません。誰がどのお家に住んでいるのかも分からないほど、ご近所付き合いは希薄でした。
物件購入時、不動産会社から「12棟で1週間ごとにゴミ捨て場の掃除当番を回しています」と説明を受けていました。しかし、待てど暮らせど当番は回ってきません。
ある日、たまたま家から出てくるタイミングで会えたお隣さんに、思い切って聞いてみることに。すると
「ちょうど次がお宅の番ですよ」と掃除用具を渡されました。
「終わったら次のお家の玄関へ置いておいてね」と教えてもらい、わが家は無事に1週間の当番を終えました。
2回目の当番が回ってこない

「3カ月もすればまた回ってくるかな」
そう思っていたのですが、半年たっても掃除当番は回ってきません。
その間に息子が生まれ、慣れない育児に追われるうちに、掃除当番のことは頭の片隅へ。気づけば当番を終えてから1年が過ぎていました。
そして育児に少し慣れてきた頃、また不安が押し寄せてきました。
「なんで当番が回ってこないの」「もしかして、うちだけ飛ばされてる…?」「まさか、サボってると思われてる…?」
ご近所さんに聞きたくても、誰が12棟の住人なのかすら分かりません。以前のようにお隣さんに運よく会えることもなく、悶々とする毎日が続きます。
たまにゴミ捨て場の汚れが気になると、自主的に掃除をすることもありました。しかし、私が掃除する頻度では説明がつかないくらい、ゴミ捨て場はいつもきれいだったのです。
「誰かが掃除してくれているんだ…」
そう思いながらも、その”誰か”を知ることはありませんでした。
いつもきれいなゴミ捨て場の真相

当番を終えてから2年近くたったある日、ゴミ捨て場の掃除をしている60代くらいの男性を見かけました。それはよく近所で犬の散歩をしているおじさんでした。会うといつも息子に優しくほほ笑んでくれる方です。
「あの人、12棟の住人だったんだ…!」
今しかない。私は思わず駆け寄り、思い切って尋ねました。
「掃除当番って今はどうなっているんでしょうか?うちは引っ越してから一度しか回ってきていなくて…」
すると、おじさんはいつもの優しい笑顔でこう答えました。
「掃除用具が壊れちゃったみたいでね、それから当番は回ってないんです。だから僕が掃除してるんですよ」
私は思わず言葉を失いました。
誰に頼まれたわけでもなく、誰かに感謝されるわけでもなく、おじさんは2年間も一人でゴミ捨て場をきれいにしてくれていたのです。
「すみません…!ありがとうございます。私も気づいた時は掃除します」
そう伝えると、おじさんは照れくさそうに笑いながら
「いやいや、僕は時間がありますから」とだけ話してくれました。
私は、感謝と申し訳なさで胸がいっぱいになりました。本来なら12棟の住人で掃除用具を新しく購入し、当番制を再開するべきなのかもしれません。
でも、ご近所さんの顔もほとんど分からないわが家には、その一歩を踏み出す勇気がまだありません。それでも今もおじさんやわが家が、気づいた時に掃除をするという形で、ゴミ捨て場のきれいな状態は保たれています。
あの日、おじさんが何の見返りも求めず、当たり前のように掃除を続ける姿を見て、「誰も見ていなくても、人のためになることを続けられる人は本当にすごい」と感じました。私もそんな姿勢にならって、人の目のあるなしに関わらず、誰かの役に立てる人でありたいです。
(ファンファン福岡公式ライター/藤瀬りか)





