「ママ、見ててね」5歳の娘が何かに挑戦するとき、いつも決まって私に伝えてくれていたその言葉。この日も、お祭りのステージを終えた娘は、真っ先に私のもとに駆け寄ってくるものと思っていました。しかし、ステージを降りた娘は、私の横を通り過ぎ、そのまま一直線にある人のもとへ走っていったのです。そんな娘の後ろ姿を見ながら、子どもの成長について改めて考えたお祭りの日の出来事です。
直前まで甘えていた娘

その日は風がとても強く、ステージ脇のテントもバタバタと音を立てていました。娘の衣装はノースリーブにミニスカート。見ているこちらが寒くなるような格好です。本番前の娘は、いつもより少し緊張した表情で、「ママー、抱っこ!!」と本番ギリギリまで、私に抱っこをせがんでいました。
大丈夫かなぁ、私のもとを離れられるのかなぁ…。そんな心配をよそに、出番になると、娘はしっかりと踊り始めました。
最後まで踊りきった娘が向かった先は

寒さで時々震えながらも、最後までしっかり踊りきった娘。ステージが終わった瞬間、私は「よく頑張ったね!」と抱きしめる準備をしていました。ところが、ステージを降りた娘は、私の横を通り過ぎ、そのまま一直線に走っていったのです。
向かった先は、見に来てくれていた、お友達のAくんでした。そして満面の笑みで言ったのです。
「私の踊り、見てくれた?」
その姿を見て、私は驚きました。そして、少しだけ寂しくなりました。 だって、ついこの前まで、「ママ見て!」だったのです。頑張ったことも、嬉しかったことも、悲しかったことも、真っ先に伝える相手は、いつだってママでした。それなのに、この日は違ったのです。
娘の成長に揺れる母の気持ち

いつの間にか、娘には、ママ以外にも見てほしい人ができていたのです。娘には娘の大切な人がいて、伝えたい相手がいて、自分の世界がある。それはきっと、成長している証拠です。
子育てをしていると、「早く大きくなってほしい」と思うことがあります。自分でできることが増えれば楽になるし、安心もできます。
けれど実際に成長していく姿を見ると、今度は少し寂しくなる。なんとも身勝手な親心です。寂しい。でも、嬉しい。相反する気持ちを抱えながら見つめた小さな背中は、いつもより少しだけ大きく見えました。
帰り道も、娘はずっと嬉しそうに話していました。
「Aくん、見てくれたって言ってたよ!」
そんな娘の笑顔を見ながら、私はふと思いました。これから先、娘の世界はどんどん広がっていくのだろうと。家庭だけではなく、友達との時間や、私の知らない場所での出来事が増えていく。そして、その一つひとつが娘の心を育てていくのだろうと。
娘が、信頼できる人と出会い、好きなことを見つけ、心から笑える時間を重ねていけたら。それは親として、とても幸せなことなのかもしれません。
(ファンファン福岡公式ライター/yutaka)





