スーパーで片足のズボンを結び、松葉杖をついているおじいさんを見かけた日。周囲の大人たちが思わず視線を向ける中、小1の息子が口にしたひと言に、私はハッとさせられました。“違い”を特別視せずに、困っている人にそっと手を差し伸べる息子の姿に、親の私が大切なことを教えられた体験談です。
スーパーで出会った“気になる視線”

息子が小学1年生だった頃のことです。近所のスーパーで2人でお買い物をしていました。そのとき、片足のズボンを結び、松葉杖をついているおじいさんを見かけました。
おじいさんが通るたび、周囲の大人たちがちらっと視線を向けます。中には、じっと見てしまう子どもに対して、「しーっ!」と慌てて止める親御さんの姿もありました。私自身も、その場の空気に少し緊張していました。
当時の息子は、そういった場面に出会う機会がほとんどありませんでした。だから私は内心「何か聞いてくるかもしれない」「じっと見てしまうかもしれない」と、勝手に身構えていました。でも、息子は、おじいさんとすれ違っても、特別気にする様子もなく、ただいつも通りの様子でした。
息子の口から出た意外なひと言

しばらくして、おじいさんが棚の下の商品を取ろうとしている姿が見えました。松葉杖をついていることもあり、少しかがみにくそうにしていたんです。
すると、隣にいた息子が、私にこう言いました。
「ママ、取ってきてあげてもいい?」
私はそのひと言にハッとしました。私は勝手に、「なんで足がないの?」「あの人どうしたの?」とか、そんな反応をするかもしれないと思っていたんです。でも、息子の中にはそんな特別な見方はありませんでした。ただ、目の前で困っている人がいるから助けたい。息子にとっては、それだけのことだったのです。
私は、「うん、お願い」そう息子に返しました。
息子はおじいさんのところに駆け寄って少し話をしてから、商品を渡していました。おじいさんはにこっと笑って「ありがとう」と言ってくださいました。たったそれだけのやりとりなのに、私は今でもあの光景がわすれられません。
テレビを見ながら、息子がぽつりと言ったこと
その出来事のあと、私はふと、以前の息子の言葉を思い出しました。
ある日、テレビに、生まれつき手がない子どもが出ていたことがありました。その子が工夫をしながら生活している様子を見て、息子は「この子、手ないのにすごいなあ」とポツリとつぶやいたのです。
私はそのとき、「手があるとかないとか関係なく、いろんなことに挑戦するってかっこいいよね」と返しました。あの時の私は、“どう伝えるのが正解なんだろう”と、少し考え込んでいました。
でも今思えば、息子は最初から、“違い”そのものを特別視していたわけではなかったのかもしれません。スーパーでおじいさんを見かけたときも、息子が見ていたのは「足がない人」ではなく、ただ「困っている人」だったのでしょう。
大人になると、「声をかけたら迷惑かな」「余計なお世話かもしれない」「失礼にならないかな」そんなふうに、いろいろ考えすぎてしまいます。もちろん、相手を尊重する気持ちはとても大切です。でも、息子はもっとシンプルでした。困っていたら、手を差し伸べたい。それだけだったのです。
“特別視しない優しさ”を、息子から教わった
私はあの日まで、「困っていそうでも、声をかけるのは勇気がいる」そう思っていました。でも、息子はそんな大人の迷いを飛び越えて、ただ自然に「手伝いたい」と思った。その姿を見て、親の私のほうが考えさせられました。
違いを必要以上に特別視するのではなく、困っている人がいたら自然に手を差し伸べること。それって、本当はとてもシンプルで、あたたかいことなのかもしれません。あの日、スーパーでいちばん大切なことを教えられたのは、私のほうでした。
(ファンファン福岡公式ライター/Rina.M)





