高校生の頃、初めてのアルバイト先のスーパーで出会ったのは、“怖いお局”。毎日のように粗を探すような言葉をぶつけられ、ある日「真顔がおばけみたいで怖い」とまで言われ深く傷ついた私。それでも辞めずに働き続けていたある日、お客さんのひと言が言い返すこともできなかった高校生の私の心を救ってくれた話です。
楽しみにしていた初めてのアルバイト

私が高校生の頃の話です。初めてのアルバイト先は、学校近くにあったスーパーでした。小さい頃からレジ打ちに憧れていた私は、採用が決まったときは本当に嬉しかったです。
だから、初出勤の日も、緊張しながらもわくわくしていました。でも、その気持ちは初日ですぐに消えてしまいました。
その職場には、昔から働いているお局パートの女性がいました。とにかく厳しい人でした。
「移動は小走り!」
「ぼーっと立たない!」
「レジ打つの遅い!」
新人の高校生相手でも容赦がなく、常にピリピリしていました。
仕事を丁寧に教えてくれるタイプではなく、「見て覚えて」が基本。少しでも動きが遅かったり、小さなミスをしたりすると、すぐにきつい言い方に変わります。まるで人の粗さがしをしているかのような人でした。
私は毎回、その人の顔色ばかりうかがっていました。
「ミスしたら怒られる」
「また何か言われる」
そんなことばかりを考えて働いていました。遠くから監視されているような視線を感じるだけで、心臓がぎゅっとなりました。
本当は、憧れていたレジ打ちをしながら楽しく接客したいのに。気づけば、お客さんではなくお局に怒られないことだけを考えて働くようになっていました。
「あんたの真顔、おばけみたいで怖い」

そんなある日、レジに立っていた私に、お局が少しバカにしたように笑いながらこう言ったんです。
「あんたの真顔、おばけみたいで怖いから笑っとき」
一瞬、耳を疑いました。そんな言葉を人から向けられたのは初めてでした。周りには他の店員さんもいたので、余計に恥ずかしくて。
お局は「なあ?」と周りに同調を求めるように笑い、周りにいた人たちも困ったように苦笑いしていました。もちろん、接客業だから笑顔が大切なのは分かっています。毎日怒られないように必死で、常に緊張して、委縮していたから、自然に笑えていなかったという自覚もありました。
特にお局が近くにいるときは、顔がこわばっていたと思います。
でも、だからってそんなひどい言い方をされなければいけない理由なんてない。悔しくて、腹が立って、情けなくて。でも、その場では何も言い返せませんでした。その場でお局に逆らうのも怖くて…。家に帰ってからこらえていた涙があふれてきました。
私の気持ちを代弁してくれたお客さんのひと言

自分の人格を否定されたようで悲しかったけれど、それでも私は辞めませんでした。辞めたいと思ったことはその後も何度もありましたが、「ここで辞めたら負けた気がする」。そんな意地みたいな気持ちもあって、頑張って働き続けました。
そんなある日のことです。お局がレジ対応をしていた時、1人のお客さんが会計を終えた後、少しイライラした様子でこう言いました。
「レジ打ちは早いけど、愛想もくそもない店員やな」
その瞬間、店内の空気が凍り付きました。お局は明らかにムスッとした顔で、「なんなん、あの客!?」と吐き捨てるように言って、バックヤードに消えていきました。
私はそのお客さんの言葉を聞いた瞬間、スカッとしました。お客さんがお局に言ったそのひと言は、まるで私の気持ちを代弁してくれたかのようだったのです。きっとお局本人には響いていなかったと思います。
「理不尽な客に文句を言われた」くらいにしか思っていなかったはずです。
それでも私はその一言に救われました。
人を傷つける言葉を平気で投げる、お局に対して、当時の私は「社会ってこういうものなんだ」「自分が悪いから怒られるんだ」と思い込んでいました。
でも、大人になった今なら、よく分かります。誰かを必要以上に傷つける人は、「私だから」ではなく、きっと誰に対してもそうだと。
結局、私は高校卒業までそのスーパーで働き続けました。きっと、お局本人は私に言った言葉もあのお客さんに言われた言葉も覚えていないでしょう。でも、あの日のお客さんの一言は、言い返すこともできなかった高校生の私は、確かに救われた言葉でした。
(ファンファン福岡公式ライター/Rina.M)





