祖父の葬式で、普段関わりのない親戚たちが進行や準備に次々と口を出し始め、式場は重苦しい空気に包まれていました。誰も強く言い返せず我慢していた中、3歳の甥っ子が放った無邪気な一言が、その場の雰囲気を大きく変えることになった出来事をお話しします。
祖父との最後のお別れの日

それは、祖父の葬式の日の出来事です。
祖父は昔から穏やかな人で、近所でも「優しいおじいちゃん」といわれるような存在でした。私自身も小さいころから、たくさんかわいがってもらい、実家へ行くたびにお菓子を用意して待っていてくれたことを覚えています。
そんな祖父が亡くなり、家族みんな深い悲しみの中で、葬式の日を迎えました。もちろん悲しい気持ちはありましたが、「ちゃんと送り出してあげたい」という思いで、家族みんなで準備を進めていました。
しかし、その空気を少しずつ壊していく人がいたのです。
次々と口を出す親戚
それは、普段ほとんど関わりのない親戚でした。
「祭壇の花はこっちの並びの方がいい」
「挨拶はもっとこうした方がいい」
「段取りが悪いんじゃない?」
そんなふうに、あれこれ口を出し始めたのです。しかも、自分ではほとんど動かず、指示ばかり。
忙しく動いている家族に対しても強い口調で話すため、だんだん空気がピりついていきました。ですが、葬式という場もあり、誰も強く言い返せません。
「今は我慢しよう」
「おじいちゃんのためだから」
そう思って耐えていましたが、式場の空気はどんどん重たくなっていきました。家族同士の会話も減り、みんな表情が硬くなっていきます。本来なら、個人を静かに偲ぶ時間のはずなのに、まるで誰かの機嫌を気にしながら過ごしているような空気になっていました。
重苦しい空気を変えた甥っ子の一言

そんな中、事件は起こりました。
その親戚が、また強い口調で何かを言い始めた時です。近くにいた3歳の甥っ子が、その人をじっと見つめながら突然こう言いました。
「じいじ寝てるのに、うるさいよ?」
その場は一瞬、しん…と静まり返りました。あまりにも真っ直ぐで、あまりにも純粋な一言。しかも甥っ子は悪気ゼロの真顔です。
続けて、
「じいじがびっくりしちゃうよ?」と首をかしげました。
その瞬間、誰かが吹き出し、それにつられるように周囲にも小さな笑い声が広がりました。さっきまでピリピリしていた空気が、一気に和らいだのです。口うるさかった親戚も、さすがに子どもの言葉には何も言い返せなかったのか、「ごめんね」と気まずそうに黙ってしまいました。
少しずつ戻った穏やかな空気

不思議なことに、その後はその親戚もあまり口を出さなくなりました。みんな少し冷静になったのか、「今は祖父を送る時間なんだ」という空気に戻っていったのです。家族、親族同士も自然と会話が増えていき、祖父との思い出話を聞かせてくれる人も出てきました。
「あのときこんなことあったよね」
「おじいちゃん、本当に優しかったよね」
そんな声が聞こえるようになり、ようやく”祖父らしい葬式”になった気がしました。甥っ子本人はというと、そんな空気の変化など気にする様子もなく、お菓子を食べながらケロッとしていました。
でも、あの一言がその場を救ったのは間違いありません。
子どもの言葉に気づかされたこと
大人になると、場の空気を読んだり、相手に遠慮したりして、本音を飲み込むことが増えます。特に冠婚葬祭では、「揉めたくない」という気持ちから我慢してしまう人も多いと思います。
でも、3歳の甥っ子は違いました。
ただ純粋に、「じいじが静かに眠っているのに騒がしい」と感じたことを、そのまま口にしただけだったのです。その無邪気で真っ直ぐな言葉が、大人たちの空気を変えました。
今でも、親族が集まると、「あの時の”じいじ寝てるのにうるさいよ”は最強だったよね」と笑い話になります。悲しいはずの葬式の日でしたが、甥っ子のおかげで、祖父らしい穏やかな時間を取り戻すことができた。そんな忘れられない出来事です。
(ファンファン福岡公式ライター/言ノ葉えり)





