上京して一人暮らしを始めた頃、職場のお友達の実家にお邪魔して、夕飯にお鍋をごちそうになった時のことです。楽しく食事をしていたのですが、〆の雑炊を作る直前、友人家族が取った“まさかの行動”に私の脳内はフリーズしました。
転勤先で出会った大切な友人の実家での夕食に招かれた日
仕事で転勤になり、上京した時のことです。配属された店舗に同い年の女の子がいて、意気投合するのに時間はかかりませんでした。仕事中はもちろん、休日も一緒に遊んだり恋の悩みを相談し合ったりと、とても仲良く過ごしていたのです。
実家暮らしだった彼女は、慣れない土地で一人暮らしをする私のことをいつも気にかけてくれていました。さらに、ご家族まで一人で寂しくない?と私を心配してくれていたようで、ある日、「よかったら夕食を食べていかない?」と温かく誘ってくれたのです。
愛情たっぷりの夕食…心まで温まる幸せな時間

彼女の自宅は、閑静な住宅街にありました。優しいご両親に迎えられ、食卓には魚や野菜がたっぷり入った豪華な寄せ鍋が並びます。
一人で食事をすることが多かった私にとって、家族みんなで鍋を囲む時間はとても新鮮で、それだけで胸がいっぱいになりました。
食事中はお友達の子供の頃の思い出話などで大盛り上がり。
「本当に愛されて大切に育てられてきたんだな」と心温まる話ばかりで、羨ましくなるほど素敵なご家庭の雰囲気に胸がほっこりしていたのです。
「これ戻していい?」〆の雑炊の前の信じられない家族ルール

楽しい会話と共に美味しいお鍋を満喫し、お鍋も終盤に差し掛かった頃。
「そろそろ締めの雑炊にしようか」とお母さんが声をかけてくれました。お鍋の後の雑炊が大好きな私は、「やった〜!」と心の中で大歓喜。大鍋に残っている具材を空けるため、自分の取り皿へとお肉や野菜を移していた、まさにその時です。
ふと見ると、友人が自分の取り皿を持ち上げ、お鍋の上で止めました。
「え…?」
そう思って見ていると、彼女は当たり前のように言ったのです。
「これ、冷めちゃったから戻していい?」
次の瞬間、取り皿に残っていたスープを、迷いなく大鍋へ戻し始めました。何も言えず、私の脳内は一瞬でフリーズ。
さらに衝撃的だったのはご家族の反応です。お母さんもお父さんも顔色ひとつ変えず、ごく当たり前の日常風景かのように雑炊の準備を進めています。
「鍋の〆作るときって汁戻すんだっけ…!?」自分の常識のほうが間違ってるのではないかと錯覚するほどでした。
大好きな雑炊を前に、最後まで葛藤した私

私は潔癖症ではありません。仲の良い友人同士なら飲み物や食べ物をシェアすることもあります。それでも、一度口をつけた取り皿の汁を大鍋へ戻すという発想だけは、今まで一度もありませんでした。
家庭によって考え方が違うことは分かっています。きっと、そのご家庭では昔から当たり前のことだったのでしょう。そう自分に言い聞かせながらも、どうしてもさっきの光景が頭から離れなかったのです。
その後、お母さんが愛情込めて作ってくれた出来立ての雑炊は、見た目も香りも完璧で間違いなく絶品のはずでした。
しかし、あの一連の映像が脳裏にこびりついて離れず、私は「食べるべきか…いやでも断れないし…」と心の中で壮絶な葛藤を繰り広げながら、何とか平然を装って一口ずつ食べるしかありませんでした。
あの日以来、お鍋の締めで雑炊を見るたびに、あの友人一家の”家庭ルール”を思い出します。家庭ごとに当たり前は違う。頭ではそう理解していても、あの時の衝撃だけは、今でも忘れられません。
(ファンファン福岡公式ライター/すぅ)





