お盆の義実家。義弟と義母が天ぷらを揚げる、いつも通りの光景のはずでした。突然始まったちょっとした口論を仲裁しようとした私に飛んできた信じられない一言。そして、味方をしてくれるはずの夫の反応は、私の期待とは違うものでした。
仲良く天ぷらを揚げる義弟と義母

娘がまだ生後8カ月だった年のお盆、私たち家族は例年通り夫の実家へ帰省。結婚していない義弟は実家で義両親と同居していました。
義弟は天ぷらを揚げるのが得意で、私たちが帰省したその日も台所で義母と並んで支度をしています。私は娘を抱っこ紐で抱えたまま、リビングでその様子を眺めていました。台所からは油の弾ける音と、義母と義弟の話し声。夏休みらしい、のんびりとした時間です。
台所から聞こえてきた怒声
しばらくすると、台所から言い合うような声が聞こえてきました。何が原因かは分かりませんが、義母と義弟がささいなことで口論になっている様子。義弟の声のトーンがどんどん低くなっていくのが分かり、私は空気を和ませようと台所に顔を出して「まあまあ、そのくらいで」と軽く声をかけました。
その瞬間、義弟がこちらを睨みつけて
「は?お前は関係ないだろ。部外者は黙れよ」と一言。
実は義弟と私は中学校の同級生で、昔からの顔見知り。「部外者」という言葉に、単なる義理の関係以上の距離を突きつけられたようで、頭に血がのぼるのがわかりました。
「口出ししたのは悪かったけど、部外者はないでしょ」と言い返すと、そこから義弟との口論に発展。娘を抱いたままで、私は完全に感情的になっていきます。
夫のまさかの態度

助けを求めて夫の方を見ると、夫は困った顔で黙っているだけ。誰も味方してくれない空気の中、これ以上その場にいることに耐えられなくなった私は、荷物も持たずに娘を抱っこ紐でしっかり抱え直し、そのまま義実家を飛び出してしまいました。
私の実家までは歩いて20分ほどの距離。真夏の炎天下、汗だくになりながら歩いていると、後ろから夫の運転する車が追いついてきました。
「送るから乗って」と言われましたが、頭に来ていた私は「歩いていく」ときっぱり断りました。
しかし内心では、てっきりドラマみたいに「いいから乗って」と強引に連れ戻されるものだと思っていたのです。でも夫は「そう、じゃあ気をつけて」とだけ言って、あっさり義実家へ戻っていきました。
その拍子抜けするような態度に、怒りがすっと引いていくのを感じました。代わりに込み上げてきたのは、こんな人を選んでしまった自分の情けなさでした。
強引にでも連れ戻してくれると、どこかで期待していた自分に気づき、余計に虚しくなります。結婚してからの数年間、私は一体何を積み重ねてきたんだろう…。そんな問いが頭の中をぐるぐると回っていました。
実家で待っていてくれた人

私の実家に着くと、ちょうどお盆で横浜から帰省していた姉がいました。汗だくで娘を抱えた私を見て、姉は事情も聞かずにまず麦茶を出してくれます。話を聞いて「それは頭にくるね」と一緒に怒ってくれました。
その一言で、張り詰めていた気持ちがすっと軽くなったのを覚えています。あの日、そばで一緒に怒ってくれる人の存在がどれだけ心強いかを知った気がします。
(ファンファン福岡公式ライター/村上由香里)





