ショッピングモールで、優雅な一人時間を楽しむはずだった私。フードコートで席を確保し、注文から戻るとそこには知らない老夫婦が普通に座っていたのです。しかも、なぜか笑顔で相席を勧められて。 気ままなランチタイムのはずが…まさかの展開になってしまいました。
平日のショッピングモールで過ごす優雅な時間が一変

平日のショッピングモールを、自由気ままに歩く。気になるお店を見て、好きなものを食べる。
子どもが小さいうちはできなかったことが、やっとできるようになりました。
その日も、お気に入りの音楽を聴きながら、“一人時間”を楽しもうとショッピングモールへ。店内は客もまばらでした。
少し早めにお昼を食べようと、私はフードコートへ向かうことにしました。
「平日は静かでいい!」
平日のフードコートはガラガラでした。私は、静かに過ごすために、あえて端っこの席を選び、ハンカチを置いてから注文へ。
無事に注文を終え、ホクホク顔で席へ戻ると、自分の目を疑いました。確保したはずの席に、知らない老夫婦が仲良く座っているのです。
一瞬、席を間違えたのかと思いましたが、机の上にはまぎれもなく私のハンカチが。
「こんなに席が空いてるのに、なんで?」
一言、文句でも言ってやろうと鼻息荒く近づきましたが、二人の楽しそうな笑顔を見た瞬間、「どいてほしい」とは言えませんでした。
仕方なく、ハンカチだけを回収して別の席へ移動しようと控えめに声をかけました。
「あの…。すみません。そのハンカチ…」
言い切る前に
「あなたの?持ち主さん見つかってよかったわ!かわいいハンカチね!」
元気すぎるおばあちゃんからの善意に満ちた大きな返事。
「あ、ありがとうござい…」とお礼も遮られ、
「ここ、取ってたの?この席広いからどうぞ~」
と勧められたのは、まさかの相席だったのです。
謎の相席ランチ会への参加

「いやいや、席取ってるのわかってなかったんかい!」
なんてツッコめるはずもなく、おばあちゃんの勢いに押されながら、私は藁にもすがる思いで、おじいちゃんへ視線で助けを求めました。
すると、おじいちゃんまでもが席をポンポンしながらニコニコしてるではありませんか。心の中では「なんでやねん!」とツッコミを入れましたが、実際には、ご夫婦の圧倒的な好意に負けて、そのまま座ってしまった私。
こうして、たくさんの空席があるフードコートで、謎の相席ランチ会がスタートしたのです。
老夫婦のほっこり話
聞けば、ご夫婦は毎週この時間、この場所でランチをしているのだそうです。最初こそ気まずさはありましたが、おばあちゃんの明るさにだんだん打ち解けている自分がいました。
お二人はお子さんがいないそうで、
「昔はね、子どもを産まないと色々言われたのよ~」と笑いながら話してくれました。
「この人がずっと守ってくれてね、本当にやさしい人なのよ」そう言っておじいちゃんを見る顔は、とても幸せそうでした。
席をとった老夫婦から一瞬で憧れるご夫婦へ。文句を言おうとした自分が少し恥ずかしくなりました。つらい経験を重ねた明るさなんだろうな…と思いながら隣を見ると、おじいちゃんがすごい“ドヤ顔”をしていたことに気づいて笑いをこらえるのが大変でした。
このいい話を聞いた余韻でお暇しようと思い、席を立とうとした瞬間
「あら~今日も来ていたのね」
なんと、おばあちゃんの友人が登場。そして次々と合流するシニアたち。気づけば総勢7名。相席ランチ会の後に、まさかのシニアお茶会が始まってしまったのです。
ポツンと取り残された私

おじいちゃんおばあちゃん達は嵐のようにしゃべり、嵐のように笑い、そして「じゃあね!」と嵐のように一斉に去っていかれました。
完全に巻き込まれたお茶会に席を立つタイミングを失った私。気づけば、広いフードコートには私一人。机の上に役目を果たせなかったハンカチがあるだけです。さっきまでの異常なにぎやかさが嘘のようでした。
「結局なんだったの…?」
私の優雅な一人時間はどこへ行ったのか、私は何でここにいるのか…。
けれど、帰りの車を運転しながら、おじいちゃんのドヤ顔を思い出して笑ってしまいました。こんな日があってもいいかと思えた、そんな一人時間の出来事です。
(ファンファン福岡公式ライター/すぅ)





