子育て中の私が経験した、おさがりをめぐるやり取り。最初は助け合いのつもりで渡していましたが、少しずつ増える相手からのリクエストに戸惑う場面がありました。そんな私たちのやり取りを見ていたママ友のある一言で、関係性の考え方が変わった出来事です。
気軽に渡したおさがりに、喜んでくれるママ友
小学生の娘を育てている私。成長とともにサイズアウトした服が増え、クローゼットの中はぎゅうぎゅう。下の子は男の子なのでおさがりはできません。「まだ着られるのに」と思いながら、ため息をついていました。
そんなとき、近所のママ友Aさんに「おさがりがあれば嬉しいな」と声をかけられたのです。「ちょうどよかったかも」そう思って、「もちろん」と何着かまとめて渡しました。
Aさんはおさがりが入った袋を開けるたびに「これもいいの?」「可愛い!」「助かる!」と目を輝かせてくれて、その反応が嬉しくて、こちらまで気分が軽くなったのを覚えています。それをきっかけに、季節が変わるたびに、サイズアウトした服をまとめて渡すようになっていきました。
少しずつ増えていくお願い

しばらくすると、「また何かあったら教えてね」と言われるようになりました。軽い気持ちで「わかった」と返していたのですが、その後から少しずつ様子が変わっていきます。
「サイズアウトした靴ってある?」
「レインコートもあったら欲しいな」
最初は服だけだったはずが、気づけば具体的なリクエストが届くように。
(あれ…こんな流れだったかな)
違和感のようなものが、じわじわと広がっていきました。とは言え、断る理由もないため「どうせ使わないし」と自分に言い聞かせ、そのまま渡し続けていたのです。
袋を渡すたびに「ありがとう!」 と言ってもらえる。でも、その言葉を聞きながら、なぜか少しだけ気持ちが引っかかるようになっていったのです。
「え、それまで!?」 思わずフリーズ

ある日、立ち話をしていたときのことです。Aさんが、何かを思い出したように言いました。
「そういえば、もうすぐ自転車もサイズアウトするよね?」一瞬、意味が分からず、頭の中がフリーズしました。
「もしよかったら、あれももらえたら助かるな」
(えぇ! 自転車まで?)
あまりにも自然な流れで言われて、思わず固まってしまいました。
服や靴とは違って、自転車はまだ普通に使えます。補助輪を外したときのこと、何度も練習した夕方の公園の景色まで、一瞬で頭に浮かびました。
それを“おさがり”として渡す発想は、自分の中にはありませんでした。どう返せばいいのか分からず、とりあえず笑ってごまかすしかなく、その場の空気が少し重く感じられました。
ある言葉で変わった空気

そのとき、近くにいた別のママがズバリ一言。
「それ、図々しくない?」
一瞬、ピタッと空気が止まった感覚。Aさんは「え、そうかな?」と苦笑いし、そのまま話題はふわっと流れていきました。
私は何も言えなかったのに、その一言で、胸の中にあった引っかかりが、急にはっきりと形になって見えた気がしました。それまで“助け合い”だと思っていたやり取りも、少しだけ違って見えた瞬間でした。その日以来、「これも渡したほうがいいかな」と迷うことがあっても、少しだけ立ち止まるようになりました。
最初は気軽に始めたおさがりでしたが、気づけば「求められて応える形」になっていました。それでもあの一言がきっかけで、ちょうどいい線引きができたのです。うっかり、大切な自転車まで手放さずにすんでよかったと、今でも思っています。
(ファンファン福岡公式ライター/大空 琉菜)





