私が長男を出産したのはコロナ禍の時。家族の付き添いができず、1人で初めての出産に臨むことになりました。陣痛促進剤でお腹の痛みはどんどん強くなるばかり…。そんな時、病室に“予想外の昼食”が。「赤ちゃんのために無理してでも食べなければ」と困り果てていた私を、ベテラン助産師さんの豪快な一言が救ってくれたのです。
コロナ禍で家族の付き添いなしの出産に

ある日、出産予定日より少し早いタイミングで突然破水しました。
慌てて病院へ向かい、そのまま入院。緊張と不安と、もうすぐ赤ちゃんに会えるという喜びが入り混じり、何とも言えない気持ちでいっぱいに。当時はコロナ禍で、家族の付き添いはできず、不安に思いながらも「頑張るぞ!」と自分自身を鼓舞していました。
しかし、思っていたようにお産は進みません。診察をしてくれた医師から提案されたのは、陣痛促進剤の使用。副作用のリスクと、痛みが一気に強くなるのではという心配で、正直少し怖かったですが、無事に赤ちゃんを産むためと使用を決断しました。
陣痛促進剤を入れてしばらくすると、じわじわとお腹に痛みが出てきました。最初は「これが陣痛かー」なんて余裕もあったけれど、時間が経つにつれて強くなっていく痛みに顔が歪みます。
誰もいない病室で、心細さと痛みを同時に抱えながら、ただただ耐えていました。
まさかの昼食!食べたいけど食べられない…

陣痛促進剤を入れてから約2時間後。時刻は正午になり、若い助産師さんが病室に昼食を持ってきました。
しかし、その昼食は、まさかの“シーフードカレー”。
もっとあっさりしているものなら食べやすいのに、正直カレーなんて食べられる状態じゃありません。
でも、「陣痛中でもご飯は食べた方がいい」という話を聞いたことがありました。「体力をつけるためにも、食べた方がいいよね…」赤ちゃんのためを思うと、無理してでも食べないとだめだという気持ちになりました。
その時若い助産師さんが「きついよね。でもお腹の赤ちゃんのためにも、なるべく食べてね」と優しく声をかけてくれました。
「やっぱり食べた方がいいんだ」と思い、助産師さんが部屋から出て行ったあと、頑張って口に運んでみます。しかし、痛みと気持ち悪さが重なって1口食べるのが限界でした。スプーンを持つ手が止まり、「赤ちゃんごめんね…」と心の中で謝りました。
ベテラン助産師さんの豪快な一言で心が楽に!

その時、いかにもベテランという雰囲気の年配の助産師さんが「どう?」と病室に入ってきました。
そして昼食を見るなり「今日よりによってカレーかい!無理して食べなくていいわ!」と豪快に言い放ちました。私はその明るい姿に思わず笑ってしまいました。
長年たくさんの出産に立ち会ってきたであろう自信と余裕が、言葉の端々から伝わってきます。正しいかどうかより、今の私の状態を見てくれている。その安心感で、肩の力が抜けました。
その助産師さんが病室から出て行ったあと、しばらくして若い助産師さんがまた病室に来てくれました。そして少し申し訳なさそうに「頑張って食べてって言ったけど、無理しなくていいよ。ごめんね。」と声をかけてくれました。
きっと、ベテラン助産師さんが何か伝えてくれたんだと思います。その気遣いが本当にうれしくて、心が楽になりました。
出産は身も心も限界になるからこそ
その約5時間後、無事に長男を出産。元気な産声と、痛みから解放されたことにホッとしました。
出産は体だけじゃなく心も限界になります。子どものためといわれることができないと、母親は罪悪感でいっぱいに…。だからこそ、慣例に基づく正論よりも、その時の心と体に目を向けてくれる言葉にこそ、救われる瞬間があるのだと思います。
あの日の「よりによってカレーかい!」という明るい声は、今でも私の心に残っています。
(ファンファン福岡公式ライター/中島にーな)





