2月に入ると、保育園の連絡帳に書かれる「友チョコは各ご家庭でご判断ください」という一文。4歳の長女は「みんなにチョコあげたい!」と…今年も例年通り、土曜日にまとめて作る流れになりました。しかし、なんとか作り終えた翌週、園長先生の一言で、わが家のバレンタインは思いがけない方向へ進むことになるのです。
毎年の恒例行事

保育園の連絡帳に書かれた「友チョコは各ご家庭でご判断ください」という一文をきっかけに、長女が
「みんなにチョコあげたい!」と目を輝かせ、その勢いのまま手作りが決定。
もはや恒例行事のようなものです。わが家は共働きで平日は時間が取れないため、今年も週末にまとめて作ることになりました。週末のキッチンは、朝からチョコレート工場のようになります。
夫が職人モードへ

チョコ作りは溶かす、混ぜる、固める…工程は多いのに、長女の集中力は10分ほどで尽きます。
「疲れた〜」「もういい〜」と去っていき、残されたのは材料と私だけ。
当初は、丸めて仕上げるだけの簡単なチョコを作る予定でした。ところが、義姉から「うちは10個作ったよ〜!」と写真付きのLINEが届きます。カラフルなアラザンやハートの飾りがのったデコチョコが並ぶ写真を見た長女は、「これ作りたい!」とさらに意欲を燃やしました。
足りないトッピングを買いに急いで近所のスーパーへ走り、作業量は一気に増加。けれど、子どもたちが次第に飽きて離れ、作業は思うように進まず、行き詰まっていました。そんなとき、夫が
「俺、やるよ」と急に言いました。
普段から料理は作ってくれていましたが、お菓子作りはあまりやったことがないはずなので不安もありましたが、手際よくチョコを丸め、飾り付け、ラッピングまで淡々と進めていきます。落ち着いた手つきは、まるで工場の職人のよう。子どもたちもやってきて、
「パパすごいね」と眺めています。テーブルにチョコが並び終わり、ようやく作業も一区切りつきました。
園長先生の一言

週明けの朝。子どもを教室へ送り届け、園の玄関ホールで靴を履き替えていると、
「保護者の方、少しお時間よろしいでしょうか」と声がかかりました。園長先生がその場にいた保護者を集め、唐突に話し始めます。
「今週水曜日のバレンタインのことですが、ご家庭の負担やアレルギーの問題が増えているので手作りのチョコレートは控えてください」それだけ告げると、園長先生は軽く会釈をして職員室の方へ戻っていきました。
その言葉に、その場の空気が一瞬、固まりました。周りの保護者も、驚きや戸惑いが入り混じったようす。
みんな同じ週末を過ごしたのだと、見ているだけでわかります。
私も、週末の作業が思い出され、バッグを持つ手に力が入りました。「もっと早く言ってほしかったな…」そんな思いが胸の奥で広がります。と同時に、ふっと力が抜けるような感覚もありました。負担だったのは事実で、複雑な気持ちが入り混じったまま、しばらく動けませんでした。
チョコの行き先が変わった夜

その夜、事情を聞いた夫は言いました。
「じゃあ、家で食べようか。せっかく作ったし」子どもたちは素直に喜び、チョコを囲んでにぎやかになります。箱を開ける直前、長女が小さな声で言いました。
「ほんとはね、○○くんにあげるつもりだったの」そう言って、一番きれいに包んだチョコを夫に差し出します。
夫は少し間を置いて、受け取りました。
「パパでいいの?」長女は笑顔でうなずき、その様子を見て、私の肩の力も抜けました。
こうして今年の手作りチョコは、配るものから、家族で食べるものに変わりました。行き先は違っても、思っていたより甘い結末でした。
(ファンファン福岡公式ライター/komorebi)





