福岡の民話・伝説収集家であるチョコ太郎さんは、子どもの頃から不思議な体験を数多く見聞きしてきました。今回は、そんなチョコ太郎さんが大人になってから訪れた、福岡県内のある公園にまつわる話です。かつて肝試しの舞台だったその場所には、今も消えない“何か”が潜んでいて…。
校区の端にある「近づいてはいけない場所」
子どもの頃、住んでいた校区の端に「近づいてはいけない場所」があった。そこは、ところどころ破れたトタン壁に囲まれた空き地。雑草と奇妙な形の木が生い茂っていた。
その場所に差し掛かると、赤ん坊が決まって激しく泣き出す。散歩中の犬も尾を巻き込み、頑なに歩くのを拒む。
そんな光景を何度も目にした。いつしかそこは「何かがいる、気味の悪い場所」として、噂の怪談スポットになっていた。
ある日の放課後、意を決して友人たち数人と「探検」に出かけた。空き地の中に入ろうとしたそのとき、山本君が溝に落ち、片脚をひどく擦りむいた。
「もう帰ろうよ」
山本君がべそをかきながら言う。その言葉に異を唱える者はいなかった。
大人になって訪れた、生まれ変わった公園

時が経ち社会人になった僕は、お盆休みに帰省した際、あの不気味な空き地がどうなっているか気になって足を向けた。
「へえ、公園になったのか」
かつての陰気な面影は消え失せていた。真新しい滑り台とブランコが設置され、明るく生まれ変わっている。幼い子どもを連れた母親たちがベンチで談笑し、犬を連れて散歩する人の姿もあった。
かつての怪談を知る身としては、拍子抜けするほど穏やかな光景だった。
しばらく眺めていて、違和感に気づいた。
よく見ると、子どもたちは公園の「ある一角」では遊んでいない。散歩中の犬も、その方向を避けるように歩いている。
誰も近づかない一角にあったもの

「よし!」
その場所に行ってみた。
植え込みの影、人目から隠れるようにそれはぽつんと立っていた。コンクリートの土台の上に乗っていたのは、黒く変色した古い小さな石碑。表面は摩耗がひどく、彫られた文字はなぜかところどころ削られていて、何と書いてあるのか判別できない。
ただ、「見てはいけないもの」を見ているような気がして仕方がない。
目をそらすと、その横でスズメが砂浴びをしている。
なんだ、のどかな…
いや、違う! 同じ場所で円を描くようにのたうっているんだ。
とっさに救い上げると、スズメは逃げるように飛び去った。
「ぎゃああっ」
真後ろから、引き付けを起こしたような赤ん坊の激しい泣き声が聞こえた。鳥肌が立った。振り向くと、赤ん坊を抱え、足早に去っていくお母さんの後ろ姿。
風もないのに、石碑の周りの雑草だけがサワサワと音を立てる。
「ここにいてはいけない」
そんな気持ちがどんどん強くなり、振り返ることもせずにその場を立ち去った。
祖母が明かした「六人塚」の由来
「あの公園…昔はずっと空き地だったところだよね。元々は何だったの?」
家に戻って祖母に尋ねた。
「あそこには『六人塚』と呼ばれる小さな塚があったんだけど、古すぎてその由来は誰も知らなくてね。昭和40年代に入った頃、その塚を残しながらアパートが建ったんだけど、数年で取り壊し。それからずっと空き地だったのは…知ってるね。一昨年、整地して公園になったんだけど、そのとき驚くほど大掛かりな地鎮祭をやったけど…あそこは忌地だね」
「忌地」とは、何か曰くがあり、家を建てたり住んだりすることを忌み嫌われてきた土地のことである。
公園という名前で覆い隠しても、そこにいる「何か」は、今も変わっていないのだと確信した。
(ファンファン福岡公式ライター/チョコ太郎)
※本記事は、ファンファン福岡に掲載された公式ライター・チョコ太郎の連載「祖母が語った不思議な話」で過去掲載された記事を、再構成・再編集したものです。





