Re:祖母が語った不思議な話・その肆拾参(43)「山の声」

私が小さい頃、明治生まれの祖母はちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。祖母の思い出とともに少しずつアップしていきます。
※「祖母が語った不思議な話」シリーズは現在も連載中ですが、サーバー変更にともない初期の話が消えてしまったので、再アップしていきます。

イラスト:チョコ太郎(協力:猫チョコ製作所)

「霧島で大きな鹿に出遭ったよ」

旅行から帰った私はお土産のかるかんを渡し、写真を見せた。
「立派な鹿だね。これを見てお話をひとつ思い出したよ」
お土産をほどきながら祖母が語り始めた。

霧島で出遭った大シカ

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【祖母の話】

祖母が5歳の夏、村からそう遠くないところで山津波が起こった。
炭焼き小屋のあたりだったので、ずっと籠っている炭焼きの幸太郎さんも巻き込まれただろうと皆が悲しんでいた。

「あぁひどい目にあった!」
その翌日、全身傷だらけでボロボロになった幸太郎さんが村に現れた。

てっきり死んだものと思っていた皆が驚いていると、何があったかを話しだした。
「いつも通り炭を焼いていたら、外から名前を呼ばれたんだ。小屋を出ても誰もいない。で、戻るとまた呼ばれる。3回目に出ると5、6間先(10数m)に大きな白い鹿がいてこっちを見ていたんだ」

差し出された茶をゴクリと飲むと幸太郎さんは話を続けた。

「あんまり立派な鹿だったので見とれていると歩き出したから思わず後を追ったよ。鹿は逃げるでもなくゆっくりゆっくり、時々こちらを振り返りながら歩いて行く。なんだか夢でも見ているようなふわふわした心持ちで付いて行ったら突然足を踏み外し、気がついたら崖の下でご覧の通りさ」

「あんた運がいいよ!」
村長の言葉に幸太郎さんはきょとんとしていた。
山津波の事も自分が奇跡的に助かったことも知らなかったのだ。

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「その鹿は山の神だってもっぱらの噂だったね。でもなぜ幸太郎さんを助けたのかは誰にも分からないままだったよ」
語り終えた祖母はかるかんをほおばり、目を細めた。

チョコ太郎より

サーバーの変更で初期話が消えてしまったので、あらためて読めるようにアップしていきます。
また、「続、新・祖母が語った不思議な話」も連載中ですので、ご希望や感想、「こんな話が読みたい」「こんな妖怪の話が聞きたい」といった声をぜひお聞かせください。
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