私が小さい頃、明治生まれの祖母はちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。祖母の思い出とともに少しずつアップしていきます。
※「祖母が語った不思議な話」シリーズは現在も連載中ですが、サーバー変更にともない初期の話が消えてしまったので、再アップしていきます。

祖母が十歳のとき長雨が続き、ある家の十四、五になる娘さんが川に落ちた。
村中で捜したが見つからず、数日後に下流の村に亡骸(なきがら)が流れ着いた。
ひとり娘だったこともあり、母親はひどく嘆き悲しんだ。
全く何も口にせず、何日も何日もただただ娘の名前を半紙に書き続けていた。

困った父親の相談を受けたお寺の住職も母親をなだめようと話をした。
「娘さんにひと目会いたいと、それだけを繰り返しておる」
このままでは母親ももたない…父親は住職と遅くまで策を練った。

「娘さんに会わせてあげよう。ただし、遠くからひと目見るだけじゃが…それでいいな」
二日後に再度訪ねて来た住職がこう言うと、母親はそれはそれは喜んだ。
住職は母親を伴い娘が溺れた川に行くと念仏を唱え始めた。
しばらくすると向こう岸に着物姿の人影が現れた。
「あの娘だ!私が縫った着物を着ている!」
母親は泣きながら手を合わせた。
「あんたが悲しんでばかりいると娘さんも心配で成仏できんぞ」
念仏を終えた住職の言葉に合わせたように人影は消えていった。
母親は涙に濡れた顔で微笑み、何度も住職に頭を下げた。

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「これはね母親を納得させるために父親と住職が仕組んだことだったんだよ。同じくらいの背格好の子に頼んで娘の着物を着せて、川のむこう岸に立ってもらうという寸法だね」
「でもお母さんは喜んだから良かったね」
「…実はこの話、不思議なことがあってね」
「何?」
「父親が娘役の子の家へ行って感謝を述べると、娘は“えっ?”という顔になったそうだよ。なんでも日にちを1日間違えていて、その日は川には行かなかったんだって」
「じゃあ…母親と住職が見たのは…」
祖母は無言で微笑んだ。






チョコ太郎より
サーバーの変更で初期話が消えてしまったので、あらためて読めるようにアップしていきます。
また、「続、新・祖母が語った不思議な話」も連載中ですので、ご希望や感想、「こんな話が読みたい」「こんな妖怪の話が聞きたい」といった声をぜひお聞かせください。
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