結婚が決まり、友人に伝えたときのこと。笑顔で祝ってくれた帰り際、思いもよらない一言をかけられました。その言葉の背景を知り、受け止め方が変わった出来事です。
結婚を伝えたその日

結婚が決まり、親しい友人たちへ報告をしていた私。中でも一番気になっていたのは、学生時代から仲の良いA子でした。彼女とは楽しいこともつらいことも共有してきた関係で、だからこそ真っ先に伝えたい相手でした。
ある日、久しぶりに2人で会った私は、少し緊張しながら切り出しました。
「実はね、結婚することになったんだ」
するとA子は一瞬目を丸くしたあと、すぐに笑顔になって「えっ、本当に?おめでとう!」と喜んでくれたのです。
その反応にホッとして、指輪のこと、両家へのあいさつ、新生活のことまで夢中で話しました。彼女も「よかったね」「ついにだね」と相づちを打ってくれて、その場はとても和やかな空気。私はすっかり安心していました。
驚きの言葉
帰り際になって、A子がふっと表情を変えたのです。さっきまでの笑顔が消え、少し視線を落としたかと思うと、小さな声でこう言いました。
「ねえ…、先に妊娠しないでね」その場の空気が、一瞬で変わりました。
え?今、なんて言ったの?冗談には聞こえませんでした。でも、どう受け取ればいいのか分からず、言葉が出てきません。私は「え、何それ」としか言えず、A子もそれ以上は何も言いませんでした。
お祝いしてくれたはずなのに、最後に残ったのは引っかかる気持ち。素直に喜べない何かがあったのだとしても、あのタイミングでそんなことを言わなくても…。正直、少し傷ついたのを覚えています。
言葉の裏にあったもの

数日後、A子本人から連絡がありました。
「あのとき変なこと言ってごめん。ちゃんと話したい」
会って話を聞くと、彼女は結婚してから8年間、ずっと妊活を続けていたのです。治療を始めればすぐ授かると思っていたのに、現実はそんなに甘くなかったそうです。
通院、検査、薬、副作用。期待しては落ち込み、また期待しては裏切られる。その繰り返し。
周囲の何気ない「まだ?」のひと言にも傷つき、まわりの妊娠報告を素直に祝えない自分にも苦しんでいたといいます。
そしてA子は、ぽつりと本音をこぼしました。
「本当は、結婚報告すごくうれしかった。でも、次に妊娠報告を聞くのが怖いって思っちゃった」
そう言って笑おうとしたA子の顔は、少しも笑っていませんでした。
あとから知った背景

私はそのとき初めて、あの言葉の裏にあったものを知りました。あれは意地悪でもイヤミでもなく、長い妊活の中で何度も傷ついてきた彼女の、心の悲鳴のようなものだったのです。人は追い詰められると、自分でも思っていなかった言葉を口にしてしまうことがあるのかもしれません。
それからは、「幸せな報告ほど、誰にでも同じ温度で伝えていいわけではない」と考えるようになりました。相手との関係が近いほど、こちらはつい「きっと喜んでくれる」と思いがちです。けれど、その人が今どんな状況にいるのか、本当のところは分からないのだと痛感しました。
A子とは、あの日をきっかけに少しだけ慎重に、でも以前より深く話せるようになりました。うれしいことを報告するのは悪いことではありません。ただ、その裏で誰かが見えない苦しみを抱えていることもある。
あの衝撃の一言は、私にそんな現実を教えてくれたのでした。
(ファンファン福岡公式ライター/大空 琉菜)





