Re:祖母が語った不思議な話・その参拾伍(36)「石が憑く」

私が小さい頃、明治生まれの祖母はちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。祖母の思い出とともに少しずつアップしていきます。
※「祖母が語った不思議な話」シリーズは現在も連載中ですが、サーバー変更にともない初期の話が消えてしまったので、再アップしていきます。

祖母が七歳の夏の夜。
暗闇の中をなにかが転がってきて、寝ている祖母の腹に当たった。
横になったままさぐると硬い物が腹に付いていている。
起き上がって見ると、拳くらいの真っ黒い石だった。
不気味に感じた祖母は何度も何度も引っ張ったが取れない…

「おい、おい!」
兄の声で目が覚めた。うなされていたらしい。

嫌な夢だったなと思いながら朝食をとっていると、兄が何かを磨いている。
「!」
それは夢で見た黒い石だった。
「そ、それ…どうしたの…?」
「昨日、隣りのS村まで皆で遊びに行ったら半分崩れた家があってな、そこを探検して見つけたんだ。黒くて綺麗だろう?」と言いながら兄は得意そうにその石を見せた。
薄れてはいるが顔や文字が刻まれていて、不吉なものを感じさせる石だった。

その晩も同じ夢を見て、ひと晩中うなされた。
その次の晩も同じ夢を見た。
そしてその次の晩も。

これは普通じゃないと思い、兄に元のところへ返すように言うと、いつになく素直に同意した。
実は兄も同じような夢を見て怖くなり、石を近所の川に捨てに行ったと言う。

「何もない所で滑って脚を切ったんだ。石を捨てるどころじゃなかった」
兄の左脚には包帯が巻いてあった。
こんなものは少しでも早く返した方が良いと、二人でS村に出かけた。
だが、石を見つけた家は取り壊されており、しかたなくそこに置いて帰った。

家に帰り着いてこれで安心と思っていると、S村に住む顔見知りの田辺さんが訪ねて来た。
しばらくして父に呼ばれた。
「お前達S村に行ったろう。田辺さんがわざわざ忘れ物を届けてくれたぞ」
そこにはあの石があった。顔から血の気が引いた。

どうしようもなくなった二人は父母にこれまでのことを打ち明けた。
それを聞いた父はあわてて出て行ったかと思うと拝み屋さんを連れて来た。

「これは…扱い方を間違えると大変なことになる」
見るなり血相を変えた拝み屋さんは、すぐに桐の箱と白い絹を用意しろと言う。
父と祖母がそれらを買って帰ると、拝み屋さんは絹を広げた上に石を置き、回りに土を盛って祝詞を唱えた。
それが終わるとそのまま石と土を包み、桐の箱に入れ封をした。

「これをなるべく人通りの多いところに置いておけ。誰かが持っていってくれればそれでもう大丈夫だ」
兄と祖母は言われるまま駅まで持って行き、待ち合いの机に置いてしばらく見ていた。
三台目の汽車が到着したあと、桐の箱は消えていた。

「あの石は捨てても戻ってくるから、この方法しかなかった。ただ、お祓いはしたので持って行った人が開けるころには悪さはしなくなっているだろう」
そう言うと拝み屋さんは帰っていった。

…………………………………………………………

その後はもう石は帰ってこなかったよ。物には思いが残っているのかもしれないね。その人がいなくなった後もずっと…」
祖母はそう締めくくった。

チョコ太郎より

初期話が消えてしまったので、あらためて読めるようにアップしていきます。また、「新・祖母が語った不思議な話」も連載中ですので、ご希望や感想、「こんな話が読みたい」「こんな妖怪の話が聞きたい」「こんな話を知っている」といった声をぜひお聞かせください。一言でも大丈夫です!下記のフォームからどうぞ。

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