大学時代、住宅展示場の受付でアルバイトをしていた私。ある日、来場特典がもらえるアンケートに答えたはずのお客さんが再び来場し、「私は書いていない」と強く主張します。対応に困っていると、休憩から戻ってきた先輩が静かに口を開きました。
住宅展示場の受付にやってきた1人の女性

大学時代、私は住宅展示場の受付でアルバイトをしていました。受付では、来場したお客さまにアンケートを記入していただき、その内容を確認したうえで来場特典をお渡しすることがあります。
その日も、いつも通り受付で来場された方を案内していました。しばらくすると、50代くらいの女性が1人で受付へ来ました。
住宅を見学したいというお話はなく、受付へ来るとすぐに来場特典について話し始めます。私は受付でお名前を確認しました。すると、以前にも来場され、アンケートを記入されている記録が残っていました。
そのため、
「以前ご記入いただいておりますので、今回は対象外となります」とお伝えしたのです。
しかし、その言葉を聞いた女性の表情が一変しました。
「私は書いてないわよ!」と言われ頭が真っ白に

すると、女性の表情が変わりました。
「私はアンケートに答えていないわよ!」
少し強い口調でそう言われ、私は思わず言葉に詰まってしまいました。
受付にはアンケートに答えた記録が残っています。しかし、女性は「絶対に書いていない」と譲りません。私は新人だったこともあり、「どう対応すればいいのだろう」と焦るばかりでした。すっかり緊張してしまい、周りの音も遠く感じるほどでした。
ちょうどその時、休憩に出ていた先輩が戻ってきました。そして、女性の話を最後まで落ち着いた様子で聞きます。それから笑顔のまま、穏やかな口調でこう伝えたのです。
「こちらには記録が残っています。もしご納得いただけないようでしたら、防犯カメラもありますので確認できますよ」
声を荒らげることはありません。
私は隣で見ていて、いつもの先輩とは少し違う空気を感じました。笑顔なのに、空気がピンと張りつめたような感覚になったことを今でも覚えています。
先輩から学んだ冷静な対応

先輩の言葉を聞いた女性は、一瞬黙り込みました。そして少し間を置いて、
「私の勘違いだったのかもしれないわ」とつぶやき、来場特典を受け取ることなく足早に受付を後にしました。
先輩の隣でその様子を見ながら、私はただ驚くばかりでした。相手を責めたり、強い言葉で言い返したりしたわけではありません。事実を確認し、冷静に伝えただけです。それなのに、あれほど険しかった女性の態度が一瞬で変わったのです。
住宅展示場でのアルバイトを通して、私は接客で本当に大切なことを学びました。
困った場面ほど感情的にならず、事実を丁寧に伝えること。そして相手に対抗するのではなく、落ち着いた態度を貫くことです。
あの日の先輩の対応は、今でも私の接客や仕事の基本になっています。
予想外の出来事が起きても、まずは冷静に事実を確認する。
その大切さを忘れずにいたいと、今でも感じています。
(ファンファン福岡公式ライター/わーちゃん)





