出産から1カ月。慣れない育児に追われる日々。そんななか、学生時代からの友人が出産祝いを持ってきてくれることになりました。その日は久しぶりに穏やかな時間が流れます。ところが、その空気は友人の何気ない言葉で一変してしまいました。
想像以上に大変な初めての育児

私は23歳で第一子を出産しました。大学時代の友人たちは社会人2年目。仕事に打ち込み、休日には旅行へ出かけたり、飲みに行ったりと、それぞれの毎日を楽しんでいました。
出産を機に仕事を辞めた私は、ずっと夢だった「ママ」になることができて、本当に幸せでした。でも、現実の育児は想像をはるかに超える大変さ。赤ちゃんは、眠っても2~3時間おきに起きて泣き、おむつを替えても、ミルクを飲ませても泣き止まないこともしょっちゅうです。
泣き止ませるために抱っこをしても泣き続ける。ようやく眠ったと思ってベッドに下ろせば、すぐに目を覚まして泣き出す。それでも何とか赤ちゃんがお昼寝を始めたら、その間に洗濯をして、夜ご飯の準備をして、自分の食事をかき込む。やっと一息つけると思った頃には、また泣き声が聞こえてきます。
トイレでゆっくりする時間さえありませんでした。もちろん、わが子はかわいくて仕方ありません。それでも、「育児ってこんなに大変なんだ」と痛感する毎日でした。
出産祝いにやってきた友人との穏やかな時間

出産から1カ月くらい経ったころ、学生時代からの友人が出産祝いを持って遊びに来てくれることになりました。久しぶりに友人とゆっくり話せることが嬉しくて、その日がとても楽しみでした。
わが家に来るなり友人は「かわいい!」と言いながら息子を優しく抱っこします。
不思議なことに、いつもは抱っこから下ろすとすぐに泣いてしまう息子が、ベッドに寝かせても起きませんでした。その日はすんなり眠ってくれたのです。
「奇跡みたい!」そう思いました。
温かい飲み物が冷める前にゆっくり飲める。時計を気にせず友人とお話できる。
そんな時間が、とても幸せに感じられました。
ところが、その穏やかな空気にひたる私に、友人がふとこう言ったのです。
「静かに寝てるなぁ。毎日こんな生活してるなんて幸せやな。毎日家で何してるん?」
私は何も言い返せませんでした。
「今日だけなんだよ」「普段は全然違うんだよ」
そう言いたかったのに、言葉が出ませんでした。
その日はたまたま息子がよく眠ってくれていただけ。普段は何時間も抱っこをして、寝かしつけてもすぐ起きてしまう。息子が寝ている間も、家事を終わらせ、自分のことは後回し。休んでいる時間なんてほとんどありません。
でも、その日たまたま見た2時間だけで、友人には私が「家でのんびり過ごしている」と映ったのでしょう。
心に重く沈んだ言葉
友人が帰ったあと、気づけば一人で静かに涙を流していました。
彼女は、学生時代は楽しいことも悲しいことも何でも話せる友人でした。だからこそ、その一言は誰に言われるよりも胸に刺さったのだと思います。どうしても受け止めきれませんでした。
産後の私は、心にも体にも余裕がありませんでした。だから、たった一言でも「分かってもらえなかった」という気持ちになってしまったのです。
友人に悪気はなかったと思います。子どもがいなければ、育児の大変さを本当の意味で想像するのは難しい。実際、私自身も母になる前は分かっていませんでした。経験して初めて分かることは、たくさんあるのだと今では思います。
あの日の出来事が教えてくれたこと

あれから月日が流れ、その友人も母になりました。
「子育てって本当に大変」「全然寝てくれない」
そんな話を聞くたびに、私はあの日を思い出します。
きっと本人は、私に言った言葉なんてもう覚えていないでしょう。でも、言われた私は今でも忘れられません。だからこそ、私はあの日と同じ言葉だけは絶対に口にしません。その代わり
「毎日大変だよね」「無理しすぎないでね」
そう声をかけるたび、23歳だったあの日の自分も少しだけ救われている気がします。
何気ない一言は、思っている以上に言われた人の心に残ることがあります。あの日、傷ついた経験があったからこそ、今度は誰かの心が少しでも軽くなる言葉を選べる自分でいたい。それが、23歳の私があの日の出来事から学んだ、一番大切なことです。
(ファンファン福岡公式ライター/Rina.M)





