息子が入った地域のサッカーチームは、「みんなで楽しく」がモットーのアットホームな場所でした。ところが、実力抜群の新メンバーが加わったことをきっかけに、チームの雰囲気は少しずつ変化していきます。子どもたちの成長を願う親の思いが、やがて予想もしなかった事態を招くことに。親子でスポーツに関わる難しさを痛感したエピソードです。
サッカーチームに上手い子が入ってきた

息子が友達に誘われて入会したサッカーチームは地域のお父さんが創設した「みんなで 楽しく」がモットーで、保護者も一緒に参加OKのアットホームな雰囲気でした。夏は水遊びに花火大会、雪が降れば雪合戦をするようなチームです。
秋の大会がひと段落したころ、新規で入会してきた子がいました。息子と同級生のその子のプレーは、2学年上の試合に入っても無双できそうなレベル。
周りの子どもたちにも好影響があり、わが子も「あの子みたいになりたい!」と放課後に練習をするようになりました。チームの監督も「次は、イイところまで勝ち上がれそうだ」と喜んでいました。
練習試合で見せた父親の怒りに場が静まり返る

しばらくして、恒例となっている近隣のチームとの練習試合がありました。練習試合自体には勝ち、意気揚々と帰りの準備を始めると、2点を取って大活躍したはずの「彼」が暗い顔をしています。「どこか痛い?」と聞いても首を横に振るだけですが、目には涙を浮かべています。
すると突然、彼の父親がやってきて「最後のシュートは逆サイドだろう?メッシだったら絶対そうだよな。なっ?かえって練習だな…あとは…」とまくしたてるように反省点を言い出しました。しかもそれは、自分の息子だけではなく、出場した選手ほぼ全員に対してノートを手に矢継ぎ早に指摘していきます。
監督が「お父さん、そろそろ時間ですので…」と止めるまで延々と続きました。さすがに周りの親は、びっくりして互いに目を見合わせて困惑。私は、監督が「いやぁ、すごいな…」と独り言を言うのを聞き逃しませんでした。
練習に意見を言い始めたことで監督と揉め事に
次の週の練習で、ついに彼の父親が本性を現しました。集合時間に私たちが行くと準備当番の母親たちが集まっています。どうやら天才君の父親が監督と練習について話をしているそうなのです。
監督は自分がチームを創るにあたり、小学生年代の指導者ライセンスを取得してちゃんとエビデンスをもって練習メニューを組んでいます。
しかし、自作のノートを手に口の端から泡を飛ばしながら話す父親に監督は根負けしたのか、「では、子どもにどちらの練習をするか決めてもらいましょう」と提案してしまったのです。
結局、「〇〇〇(天才君)みたいになりたい人はこっち」というわかりやすい誘導に大多数の子どもがひきつけられて、練習は父親が仕切ることになりました。こうなるともう監督はやる気を失ってしまったようで、わが子の年代の練習はこの父親に任せっきりになっていきました。
秘密の特訓が本当に秘密裏に行われていた!

そして、事件が起きたのは平日。息子の帰りが遅く心配しているとサッカーチームのママから「習い事なのに帰ってこない、何か知らないか?」と連絡がありました。
手分けして探しましたが7時を過ぎても見つかりません。すると、「車で30分ほど離れたフットサルコートに子どもたちがいた」という連絡が、帰宅途中だったある家の父親から入りました。
向かってみると、天才君の父親が子どもたちに練習をさせているところでした。「うちの子のようになりたいとみんなが言うので、練習環境を整えただけですよ」と当たり前のことのように言います。ここまでの移動も自ら運転して全員を連れてきたとのこと。
知らぬ場所で「帰りたい」とは言い出せず我慢していた子たちは、母親を見るなり泣き出してしまいました。後で息子に聞いた話では、以前から近所の公園で秘密練習をしていて、ここに来るのは初めてだったとのことでした。
チームは正式に分裂して再出発
この事件から、監督を含めて話し合いの場を持ち、父親にはチームを出て行ってもらうことになりました。しかし、一部の保護者と子どもは、「サッカーが上手になりたい」という思いから、新チームを創り活動をはじめました。対戦することがあったら複雑な気持ちになりそうです。
(ファンファン福岡公式ライター/ルンルン)





