子どもが小さかった頃、夫が突然付け始めた見慣れない高級そうな腕時計。「1万円のニセモノだよ」の言葉を信じた数年後、掃除中に見つけた領収書にはまさかの“100万円”の文字が…。思わず「本物じゃねーか!」とツッコんだ、夫の呆れた大嘘のお話です。
子ども優先で自分のことは後回しだった日々

6歳と1歳の子どもを抱えて、家事、育児、仕事に追われ、お金にも時間にも余裕がなくなっていた20代後半のころ。私の育児休暇が明け、職場復帰をしました。
そのときの私は子どものことが第一でしたから、「自分のものは極力買わない」そんな考えが自然と身に付き始めていました。
当時、夫は20代の営業マン。同僚に独身が多く、仕事の上での付き合いも多かったので、いつまでも独身気分が抜けきらない様子。今では理解していますが、当時の私は、そんな夫に不満を募らせるばかりでした。
夫の腕に輝く”ニセモノの時計”

私の誕生日が近づいたある日のことでした。夫から、
「なにか欲しいものないの?時計欲しいって言ってたよね?インセンティブ入ったから買ってあげるよ」
と言われました
確かに以前は欲しいと思っていましたが、今の優先順位は自分ではなく子どもたち。
「今は欲しいものないし、自分の好きなものでも買いなよ」
そう言って、プレゼントは断ったのです。
ところが数日後。仕事から帰ってきた夫の腕には、見慣れない腕時計がキラリ。どう見ても高そうな時計でした。
「本当に自分のものだけ買ってきたの?!」
口にこそ出しませんでしたが、心の中は穏やかではありません。
「これ、どうしたの?高そうだけど…」
気づけば、私は詰め寄っていました。すると夫は、平然として言ったのです。
「これ?1万円のニセモノなんだよ」
「〇〇にそういうお店があってさ、同僚と行ったんだよ」
夫のその言葉に怪しいとは思いましたが、当時の収入で高額な買い物はできないだろうと、自分を納得させていました。
ですが、“ニセモノ”とは思えないほど、夫はその時計を大事にしていたのです。違和感はありましたが、時計に詳しくない私は「まぁいいか」と気にしなくなっていきました。
アクセサリーケースの中に眠っていたもの

そして数年後。夫の部屋の掃除をしていた私は、棚の上に置かれていたアクセサリーケースに目を止めました。
「中に何がはいってるんだろう」
軽い気持ちでパカッと開けてみると…そこには、アクセサリーではなく一枚の紙が入っていたのです。夫が行ったという時計屋さんの領収書でした。
「あのニセモノの時計の領収書ね」と思いながら、印字されていた金額を見た瞬間でした。
「いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅうまん…ひゃくまん!?」
私の動きは完全に停止。
何度数えなおしても、100万円と書かれているのです。
「本物じゃねーかよ!」思わず飛び出したのは、芸人にも負けない盛大な一人ツッコミでした。
夫を問い詰めた夜
夫が帰宅するまでの間、私は「どんな風に問い詰めてやろうか」と作戦を練っていました。口が達者な夫が、一言も言い逃れができない状況を作ってやろう。
そして夫が帰宅し、ダイニングテーブルに座った瞬間。私は静かに、いつもの会話のように一言だけ伝えたのです。
「その時計の領収書、見たで」
すると、さすがの営業マンも一瞬で顔がこわばりました。それでもヘラヘラしながら、
「バレちゃった~?」
「領収書なんか、あった~?」と、とぼけるのです。
いつもは方言を使わない私の口からでる関西弁に、これはヤバいと感じたのでしょう。本当なら口数の多い夫が、そのあとは黙り込んでしまいました。
家に入れてくれている生活費とは別で、自分が必死に稼いだインセンティブ。どう使おうが夫の自由なのかもしれません。ですが、子育てと仕事で必死な私の横で、100万円の買い物を隠していたことが許せませんでした。
「相談したら反対するでしょ~?」と悪びれずに言い訳をする夫。
そんな夫に対して私は何も言いませんでした。そのときの私の姿は、夫の目にはどう映っていたのでしょうか。
今でもその時計を見るたび、私は時々、
「ニセモノの時計かっこいいね」と嫌味を言って笑っています。
100万円の数字を何度も数え直した、あの日の衝撃。それは今でも、忘れられない思い出になっています。
(ファンファン福岡公式ライター/すぅ)





