Re:祖母が語った不思議な話・その参拾伍(35)「餅撒き」

私が小さい頃、明治生まれの祖母はちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。祖母の思い出とともに少しずつアップしていきます。
※「祖母が語った不思議な話」シリーズは現在も連載中ですが、サーバー変更にともない初期の話が消えてしまったので、再アップしていきます。

イラスト:チョコ太郎(協力:猫チョコ製作所)

幼い頃、「餅撒き(もちまき)」がとても楽しみだった。
家を建てるとき、棟上げをした日に棟木(屋根の一番高い所を支える横木)の上から、家主や大工さんが餅やお金、縁起物を撒いてお祝いする儀式で、見物人はそれを拾って福を分けてもらうというおめでたいものだった。

その日も祖母と二人で近所の棟上げに行き、たくさん餅やお金を拾った。
ほくほくしながら帰る道々、祖母がこんな話をしてくれた。

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【祖母の話】

ある日、隣町での仕事を済ませた祖母の父が家路を辿っていた。
すっかり陽も落ち山道は暗く、提灯だけが頼りだった。
峠を越えた頃には細い月が中空に昇った。
急ぎ足で進んでいると前方にほんのり灯がともっている。
「なんだろう?」と近づくとこんな夜中に棟上げをやっている。

明らかに尋常ではない。

「あんたもこっちに来て祝ってくれ。酒もあるぞ」

足早に通り過ぎようとした時、赤ら顔の男に声をかけられた。
怪しいとは思ったが飲んべえだった父はふらふらと引き寄せられた。
十数人が焚き火を囲み酒盛りをしていた。
綺麗な女の人が側につき次から次へとお酌をしてくれるので、すっかり良い気持ちになりどんどん杯を重ねた。

「さあ、餅撒きだ!」

赤ら顔の男の合図で餅撒きが始まった。
紅白の餅やお金、張り子のだるまや光る玉などが雨霰と降ってきた。
ふところ一杯になるまで夢中で拾ったが、あんまりはりきったからか酒が急に回り、倒れるように眠ってしまった。

翌朝目を覚ますと、あたりには誰もいない。
それどころか棟上げをした新しい家もたき火の後も何一つ残っていなかった。
しめ縄を張った大きな樫の木が立っているだけだった。
ふところの中にいっぱいあったはずの縁起物や餅も無くなっていた。

キツネにつままれたような顔で村に帰った父は皆にこの事を話したが
「どうせ隣村で朝まで飲んでたんだろう」と信じてはもらえなかった。

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「他の人は笑ってたけど、私は信じたよ。お父さんは山の神様とひと晩過ごしたんじゃないかな。ふところの中のものは無くなっていたけど、それから風邪ひとつひかずに長生きしたからね」

祖母がそう語り終えた時、ちょうど家に着いた。

チョコ太郎より

初期話が消えてしまったので、あらためて読めるようにアップしていきます。また、「新・祖母が語った不思議な話」も連載中ですので、ご希望や感想、「こんな話が読みたい」「こんな妖怪の話が聞きたい」「こんな話を知っている」といった声をぜひお聞かせください。一言でも大丈夫です!下記のフォームからどうぞ。

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