わが家の息子が5歳、娘が3歳の時、家族で七五三の記念撮影に行ったときの話です。紋付き袴でキリッと決めた息子。カメラマンさんに刀を手渡された瞬間、思いもよらない行動に出て……。最終的に家族全員で選んだのは、一番「息子らしさ」が表れていた1枚でした。
隣のブースの大泣きで不安になった順番待ち
写真館に着いて順番を待っていると、隣のブースから「イヤァァァ!」というものすごい泣き声が聞こえてきました。見ると、3歳くらいの女の子がせっかくきれいにセットした髪を振り乱して大泣き。カメラマンさんが声をかけてもあやしても泣き止まず、ご両親も苦笑いしながら必死になだめていました。
それを横目で見ながら、正直めちゃくちゃ不安になりました。「うちの子たち、大丈夫かな…」と。夫も同じことを考えていたようです。私は「まあ、なるようになるでしょ」と苦笑いで返しましたが、内心はかなりドキドキしていました。
でも意外にも、うちの2人は落ち着いたものでした。
着物を着せ替えられても、カメラマンさんに「はい、こっち向いてー」と言われても、二人とも素直に指示を聞いています。紋付き袴姿の息子はいつもよりだいぶキリッとして見えて、「今日はいけそうだね」と夫とこっそり話していたところでした。
紋付き袴の息子が繰り出したまさかの決めポーズ

スタッフから渡された刀を持った途端、息子が急に立ち上がりました。そして両腕をぶわっと振りかぶり、片足を高々と上げて、刀を振り下ろします。さらに刀を肩に担いで、キメポーズ!
…どう見ても、とある特撮ヒーローの名乗りのポーズです。紋付き袴という和装の正装で、まさかのフルパワーの決めポーズでした。
「はっ!」という掛け声とともに刀を振り下ろし、「天下統一!」と、どこかで聞いたようなセリフまで飛び出す始末。夫が小声で「ちょ、ちょっと、そのポーズは…」と止めようとしましたが、息子は素知らぬ顔でキメ顔を崩しません。
「かっこいいでしょ!」と得意げに胸を張る息子に、夫と顔を見合わせて苦笑いするしかありませんでした。せっかくちゃんと撮ってもらっているのに~!と、一瞬冷や汗が出ました。
カメラマンの神対応で兄妹そろってヒーローごっこ
ところが、カメラマンさんの反応は予想と全然違いました。
「おー、いいねそのポーズ!」と即座にノリノリになって、そのままシャッターを連射。
「え、あの、すみません、普通のポーズで大丈夫なので…」と私が慌ててカメラマンさんに声をかけると、笑いながら「大丈夫ですよー、こういう自然な表情が一番いい写真になるんです」と返してくれました。その一言で、肩の力がすっと抜けたのを覚えています。
「もう一回!」「今度はこっち見て!」と、まるで最初からそういう企画だったかのようにサクサク撮影が進んでいきます。慌てていたのは私たち夫婦だけだったかもしれません。隣で見ていた娘もつられて謎のポーズを取り始め、気づけば兄妹そろってヒーローごっこ状態に。
それでもカメラマンさんは全然嫌な顔せず、むしろ楽しそうに何カットも撮ってくれました。プロってすごいな、と変なところで感心してしまいました。
家族が選んだのは、やっぱりあの一枚

後日、仕上がった写真が届いて、家族みんなで選ぶことに。ちゃんと正面を向いた、いかにも七五三らしい一枚も撮ってもらっていました。
でも最終的に選んだのは、やっぱりあの特撮ヒーローの決めポーズの一枚。写真を選ぶとき、娘が指をさして「これ!これがいい!」と即答したのが決め手でした。
夫も「うん、これだね」とすぐにうなずき、私も内心では最初からこの一枚が一番好きでした。家族の意見がこんなにすぐ一致したのは、後にも先にもこの時くらいかもしれません。
紋付き袴に特撮ヒーローのポーズという、本来なら絶対合わないはずの組み合わせなのに、写真の中の息子が一番いい顔をしていて、家族全員「これでしょ」と即決でした。
七五三って、決まった衣装を着て、ちゃんとした表情で写真に収まる、みたいなイメージがどこかにあったんですが、うちの場合はあっさりそれを飛び越えていきました。
でも結果的に、一番息子らしくて、一番思い出に残る一枚になったので、これはこれで良かったなと思っています。
ちなみに隣で泣いていた女の子も、今頃はきっと落ち着いて素敵な写真が撮れたはず。子育てって、思い通りにいかないことばかりですが、その「まさか」の瞬間が、後から一番愛おしい記憶になったりするんですよね。
(ファンファン福岡公式ライター/shinobu)





