スーパーで、子どもに大声で怒鳴るママを見かけましたが、私は声をかけられずその場から立ち去りました。居合わせた人の中には「そんなことで怒らなくても」と思う人もいたかもしれません。でも自分も二児の母として、あのママの気持ちが痛いほど分かります。
スーパーで見かけた顔見知りのママ

下の息子を抱えてスーパーへ行った、ある日のことです。買い物カゴを片手に店内を歩いていると、見覚えのある親子の姿が目に入りました。娘と同じ幼稚園に通う双子のママです。
年少の双子の手を引き、胸には生後半年ほどの赤ちゃんを抱っこひもで抱えています。両手も体も、いっぱいいっぱいの様子でした。
その双子のママとは、顔を合わせれば「こんにちは」と軽く挨拶をする間柄です。でもこの日は、どうしても声をかけられませんでした。私はとっさに、棚の陰へ身を隠してしまったのです。
店内に響きわたる怒鳴り声

その理由は、ママが双子に向かって大きな声で怒鳴っていたからでした。
「ちゃんと後をついてきなさい!」「買わないものにさわらないで!」
びりびりと空気が震えるような怒声に、私は声をかけることができずに見守るだけでした。
怒っている内容だけを聞けば、「そんなことで怒らなくても…」と感じる人もいたかもしれません。実際、あまりの剣幕に、私も近づくことができませんでした。
双子は半べそをかきながら、それでも棚のお菓子に手を伸ばしてしまう。ママの肩は小刻みに上下し、抱っこひもの赤ちゃんはぐずり始めています。その様子に、見ているこちらの胸まで、きゅっと苦しくなりました。
私はそっと、その場を離れました。逃げた、という方が正しいかもしれません。
「こんな姿を見られたなんて、きっと知られたくないだろうな」と思ったからです。
あのママは、この日のスーパーでの出来事だけで怒っているのではない。きっと毎日の小さな我慢が積もり積もって、ほんの少しのきっかけであふれ出してしまっただけ。私にはそう思えてなりませんでした。
3歳の双子と0歳の赤ちゃんを、たった一人で抱えての外出です。買い物ひとつ取っても、彼女の子育ては想像を絶する大変さでしょう。1歳と4歳の二人でも手いっぱいの私には、とても真似できることではありません。
あの日のママへ伝えたかったこと

子どもを激しく叱っているからって誰もあのママを責めないでほしい。私は心からそう思いました。怒鳴ってしまうのは、それだけ必死に向き合っている証でもあります。
もし私とそのママが通りすがりの関係だったなら、きっと「お手伝いしましょうか」と声をかけて手を差し伸べていたはずです。でも顔見知りだからこそ、よけいな気を遣わせたくなくて、何もできませんでした。
子育ては、子どもに笑顔を見せる余裕さえ奪っていきますよね。私にも、辛さを表に出せずに涙をこらえた日が何度もありました。だからこそ、今も同じようにがんばっているママへ、せめて心の中だけでもそっとエールを送りたい。目の前の光景に、そんなことを考えた出来事です。
(ファンファン福岡公式ライター/こまち)





