久しぶりの家族旅行でホテルに泊まりました。そこには大浴場があり、娘と入ることを楽しみにしていました。しかし、いざ大浴場に行くと、プールかのように泳ぐよその家の子ども。誰も注意できずに困っていたところ、声を上げた人のおかげで、その状況が変わります。
4歳の娘が初めての大浴場に大興奮!

久しぶりの家族旅行で訪れたホテルには大浴場がありました。4歳の娘のオムツは完全に外れていましたので「浴室内では走らない」「他の人の迷惑になることはしない」と約束。一緒に入浴予定にしていました。
出発前から娘は初めての大浴場を
「おふろ、はいれる?」と楽しみにしており、ホテルに着いてからも
「いつおふろいくの?」と目を輝かせていました。
私も久しぶりの大浴場に自然と気分が上がっていました。
娘は約束を守れるようになってきたとはいえ、初めての場所ではなにがあるかわからないため、ホテルの大浴場には比較的空いている夕食前に行くことに。
大浴場は予想通り空いていて、娘と2人で「熱くない?」「きもちいいね」と話しながら、入浴を楽しんでいました。娘は広い浴場に目を丸くして「おおきいおふろだね」と何度も繰り返していました。
普段は私と2人で、小さなユニットバスに入っている娘にとって、まるで別世界に見えたことでしょう。
しかし、私は気になる親子に気づきました。
泳ぐ女の子

なんと、7歳くらいの女の子が大浴場の湯船の中でクロールで泳いでいるのです。どうやら最近泳げるようになったらしく「ママ見て! 」と誇らしげにしていました。
水しぶきが洗い場の床まで飛んでいるにも関わらず、隣で見守る母親は止めるどころか笑顔で
「上手上手!」と褒めるだけで、周囲への配慮はまるで感じられません。
浴場内にはご年配の方や子育てを終えたと思しき女性もいましたが、みなさん迷惑そうな表情を浮かべながらも、誰一人声をかけられずにいました。
見ず知らずの親子に注意して、逆ギレされたり気まずい雰囲気になったりするのは誰だって避けたいものです。私も「お風呂から上がったらスタッフさんに伝えよう」と思うだけでした。
それでも、せっかくのゆったりした時間がじわじわと削られていく感覚に不満が大きくなりました。娘が「なんであのこ、およいでるの?」と小声で聞いてきたときには「さあ、なんでだろうね」とごまかしながらも、内心モヤモヤがさらに募っていったことを覚えています。
ママとの約束があった!

そんな中、しばらく湯船に浸かっていた娘がふと私を見上げました。
「ママ〜、おふろでおよいじゃだめなんだよね〜?」
屈託なく放たれたよく通る声。
娘本人は私との約束を思い出して確認しただけでしたが、その声はしっかりと浴場内に響き渡りました。クロールをしていた女の子もその母親もぴたりと動きを止め、一斉にその場にいた全員がその親子に視線を向けると、気まずそうに親子は露天風呂のほうへと移動していきました。
その場に居合わせた他の方たちは、娘に向かって「えらいね」「ちゃんとわかってるんだね」「お利口さん」と口々に声をかけてくれました。
娘は褒められた理由がよくわかっていない様子で、きょとんとした顔のまま「ふつうだよ」と言っていました。その一言がまた、その場の空気を和らげてくれました。
小さなマナーと大きな成長
気持ちよく内湯を楽しんだ後、露天風呂に向かうと、あの女の子はまた泳いでいました。「まだやってるんだ」と苦笑いしながら湯に浸かっていると、誰かがホテルのスタッフに声をかけてくれたのでしょう。スタッフの方が現れて
「大浴場は泳ぐことは禁止になっております。他のお客様にご迷惑になりますのでお控えください」と母親に対してはキツめに、女の子には優しい口調で「お風呂はゆっくり浸かるところだからね」と穏やかでしたがはっきりと注意。
今度こそ観念したようで、その親子は静かにお風呂から上がっていきました。
子どもは、大人よりもずっとまっすぐにルールと向き合うものです。私との約束を守った娘の姿に、この初めての大浴場は、彼女の成長を実感できた忘れられない旅の一場面になりました。
帰り際に「またおおきいおふろにはいりたいね」と笑顔で言ってくれた娘が、私にはまぶしく見えました。
(ファンファン福岡公式ライター/高谷 さな)





