昭和気質の義父は、食事中も「お茶!」と義母に頼むタイプ。ある日、少し強い口調になったその瞬間、5歳の息子がかけた言葉で空気が変わりました。思わず笑ってしまうやり取りの中で、子どもの言葉が大人に届く力を感じた出来事です。
「おい、お茶」が当たり前の食卓

義父は、とても優しい人です。孫にもよく話しかけてくれるし、会えば「おぉ、よく来たな」と笑顔で迎えてくれます。ただ、いわゆる“昭和の男”。家事を自分からするタイプではありません。
以前、夫と息子と義実家にお邪魔したとき、義父しかいなかったことがありました。
快く迎えてくれたものの、3時間ほど滞在しても、お茶が出てくることはなくて「こういうところも含めて、義父らしいな」そんなふうに感じたのを覚えています。
家族で食事をするときも同じです。自分の食器や箸は義母が用意し、お茶も当たり前のように入れてもらいます。
「おい、お茶」
ドラマの中でしか聞いたことがないような言葉が、普通に飛び交う食卓でした。
その日の食卓で起きたこと

そんなある日、義実家でみんなで食事をしていたときのことです。年長になった息子は、最近、自分でコップにお茶を注げるようになっていました。それまでは「お茶ください」とお願いしていたのに、その日は自分でポットに手を伸ばしていました。
その姿を横目に見ながら食事をしていると、義父がいつものように言いました。
「おい、お茶」
ちょうど義母はキッチンにいて、声が届かなかったようです。すると義父は、少し強い口調で、
「おい!お茶!」
と、もう一度言いました。その声に、場の空気が少しだけピリッとしました。
思いがけず飛んできた一言
そのときでした。息子が、義父のほうを見て口を開きました。
「ジィジ!」
突然の呼びかけに、義父が「ん?」と顔を向けます。そして息子は、まっすぐな目でこう言いました。
「ジィジはもう大人なんだから、自分でお茶入れられると思うよ?」
一瞬、空気が止まった気がしました。さらに息子は続けます。
「見て!ぼくだって最近だけど入れられるようになったよ!ジィジもきっとできるからやってみて!」
まるで小さな子に教えるような、やさしい口調でした。義父は少し戸惑ったように笑いながらも、「そうか?」と立ち上がり、自分でコップにお茶を注ぎました。
「ジィジできたね!」で和らいだ空気

お茶を注ぎ終えた義父に向かって、息子は嬉しそうに言いました。
「ジィジできたね!すごーい!」そしてさらに、
「ジィジ、バァバに頼むより絶対自分でやったほうが早いよ!」と、にこにこしながら続けます。
「ぼくもね、ママに頼むより自分でやったほうが早いって気づいたんだ!」その言葉に、義父は思わず笑って、
「あっはっは!そうだな、そりゃそうだ」と声をあげました。
「ジィジもこれからは自分でやるよ」さっきまでの少しピリッとした空気は、すっかりやわらいでいました。
子どもの言葉が変えたもの
それから何度か義実家で食事をしていますが、義父は自分でお茶を注ぐようになりました。
それでも、箸がないときは相変わらず「おい、箸!」なんて声も飛びます。でも、あのときの変化は確かに残っています。
子どもの言葉は、ときどきまっすぐすぎて、大人だと少し言いにくいことも、すっと届いてしまう。あの食卓でのやり取りを思い出すたびに、その力を少し不思議に感じます。そして同時に、少しだけ羨ましくもなるのです。
(ファンファン福岡公式ライター/irone)





