私がバス通勤をしていた頃、街で出くわしたトラブルについてお話します。私がバスの列に並んでいると、並び方にクレームを入れているマダムに遭遇しました。並んでいたサラリーマンがマダムに反撃し口論に。その場はなんとか収まりましたが、後日思いもよらない出来事が起きたのです。
バス停で出くわしたマダム

自宅からバス停まで約徒歩5分。当時車を持っていなかった私は、その便利な立地に惹かれて引っ越しをしました。通勤初日、私がバス停の列に並んでいると、到底バス待ちとは思えない割烹着姿のマダムが現れたのです。
マダムは誰にともなくつぶきやきました。
「まったく。こんな横に並ばれたら迷惑だわ。営業妨害よ」続けて一番近くにいた私に向かってこう言ったのです。
「ここはね、美容室の駐車場なの。こんな風に広がって並ばれたら困るわけ。営業妨害もはなはだしい!」
たしかに言われてみれば、美容室の駐車場はバス停のある歩道に沿って面しています。バス待ちの列が横一列に並ぶと、ちょうど駐車場を塞ぐような形になってしまうので、車が出入りできなくなるのです。最初こそ申し訳ないなと思った私でしたが、その後もマダムの逆襲は続きました。
バス停での並び方にクレーム

マダムは次の日もバス停に現れ、並んでいる乗客にクレームを連発。「横でなくて縦に並んでくれる?」「あなたほら、次に来た人にも伝えておいて!営業妨害なんでね!」マダムは苛立ちを隠そうともしない口調でした。
マダムの言い分もわかります。しかし朝の通勤ラッシュの時間帯は乗客が多く、縦に並んでも2列・3列になってしまうため、いずれにしても駐車場の前を占領してしまいます。バス停が大通り沿いというのも不運でした。
それでもマダムは懲りません。「ここはね、私の駐車場なの!ちゃんと不動産屋と契約しているのよ!」次の日もバス停に現れては、乗客をどかしていきます。私だけでなく、乗客の誰もが「これではきりがない」と感じていたのではないでしょうか。
数日後、バス停に一枚の貼り紙が登場しました。「駐車場敷地につき↓このようにお並びください」と書かれており、縦に並ぶよう下向きの矢印で示されています。
それ以降、乗客たちは貼り紙に従って縦に並ぶようになり、マダムもぱったり姿を見せなくなりました。「ようやく丸く収まった」そう思っていた矢先、思わぬトラブルが起きたのです。
マダムVSサラリーマン

マダムが姿を見せなくなると、だんだんと並び方がいい加減になってくる乗客が現れはじめました。どこから噂を聞きつけたのか、それに気づいたマダムは、再びバス停に姿を現したのです。
「あなた!この貼り紙見える?縦に並んでって書いてあるでしょう?」
マダムがそう言うと、列からはみ出して横に広がっていたサラリーマンらしき男性が言い返します。
「ここはバス停だろ?この向きだと列が入りきらないんだよ。数分の間なんだからいいだろ!」
私はひやひやしながら二人の会話に聞き耳を立てていました。マダムは一歩も引きません。
「ここはね、私がお金を払って借りている駐車場なの!お店はもう開店していて、お客さんが車を止められないって言ってるのよ!」
するとサラリーマンは「そんなのここを選んだあんたの責任だろ。自業自得だ」と反撃。マダムは何か言いたげな顔をしていましたが、言い返す間もなくバスが到着したのです。
バス停でのトラブルの行方
数カ月後、バス停にまた新たな貼り紙が貼られました。そこには『4月より本バス停は〇〇前に移動します』との一文。この思いもよらない結末に、私は仰天しました。おそらくマダムの要望を受け入れたバス会社や街にも、バス停を動かしたマダムの行動力にも、ただただ驚嘆するばかりでした。
(ファンファン福岡公式ライター /W.M)





