私が小さい頃、明治生まれの祖母はちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。祖母の思い出とともに少しずつアップしていきます。
※「祖母が語った不思議な話」シリーズは現在も連載中ですが、サーバー変更にともない初期の話が消えてしまったので、再アップしていきます。

ある日、祖母が古い裁ち鋏(はさみ)を油を塗った布で大切そうに手入れしていた。
「おばあちゃん、それ何?」
「これはね、私のおばあちゃんからもらった守り鋏よ」
「守り鋏?」
「そう。これにはこれまでに三回助けられたのよ」
「どんな風に?」
「一度目は私の兄さんが鋏を持ったまま転んで服は大きく裂けたのに傷一つなかったこと。二度目はあなたのお父さんが子どもの頃、首に紐がからんでほどけず息ができなくなったんだけど、いつもは机の引き出しにしまってあったはずのこの鋏が目の前にあって助けることができたこと」

「三度目はね…」
祖母は語り始めた。
夏の午後、二人目の子を産んだばかりの祖母は子どもの服を作ろうと生地を裁っていた。そばには子ども達が寝息を立てていた。
あまりに暑いので戸は開け放していた。

作業に熱中していた祖母がふと誰かの視線を感じて目を上げると、知らない老婆が裏口から子ども達をのぞいている。
「どなたですか?」
声をかけたが返事もせず、老婆はニタニタ笑いながらじいっと立っている。
厭な感じをおぼえた祖母は、思わず鋏を持ったまま立ち上がった。
笑っていた老婆は鋏に目をやった瞬間形相が一変し、そろりそろりと裏口から姿を消した。

「すごく気味の悪い…姿は人だけれど人じゃないような感じだった…この守り鋏のおかげで助かったよ。大切にしなくちゃね」
チョキン!
磨き終わった鋏で祖母は机の上のお煎餅の袋を開けた。





チョコ太郎より
初期話が消えてしまったので、あらためて読めるようにアップしていきます。また、「新・祖母が語った不思議な話」も連載中ですので、ご希望や感想、「こんな話が読みたい」「こんな妖怪の話が聞きたい」「こんな話を知っている」といった声をぜひお聞かせください。一言でも大丈夫です!下記のフォームからどうぞ。
