デジタル音楽全盛の現代にあって、アナログレコードの人気がじわりと高まっているそうです。なぜ今、レコードが支持を集めているのか?福岡市・天神の大型複合ビル「ワン・フクオカ・ビルディング」(ワンビル)2階に九州初出店した中古盤中心の専門店「フェイスレコード」で調査すると、デジタルとアナログを融合させた、新たなムーブメントがあることも分かってきました。
音楽カルチャーの一部に
フェイスレコードを運営するFTF(東京)が今年7月、福岡県内に住む15~89歳の男女500人にインターネット上で意識調査をしたところ、全体の65.0%が「レコードに触れたことがある」と回答し、15.6%が「直近1年以内に購入経験がある」と答えました。有名アーティストによる新品のアナログレコードも発売されており、今でも現代の音楽カルチャーの一部として支持されていることが浮き彫りになりました。

フェイスレコード福岡天神ワンビル店の飯島英大店長は「音楽が盛んな福岡ではさまざまな場面や形態で音楽を楽しもうという気風があるのではないか」と分析しました。確かに、「MUSIC CITY TENJIN」や「中洲ジャズ」など、まちなかでの催しが根付いていることが背景にあるのかもしれません。日本レコード協会が発表した2024年のアナログレコード生産額は、前年比1.26倍の78億8700万円となっています。70億円を超えたのは、1989年以来とのことで、レコード人気が回復傾向にあることがうかがえます。

「イチから分かる」楽しみ方

アナログレコードを始めてみたい!と思っても、何が必要か、予算はどれくらいか分からないことも多いはず。飯島店長によると「プレーヤーとレコードさえあれば手軽に始められる」とのことです。福岡天神ワンビル店で取り扱っているプレーヤーのうち、初心者に人気なのはスピーカーが搭載されたモデルで、価格は1万3000円ほどだそうです。

レコードがあれば、すぐに音楽を楽しめるとあって、「入門用としておすすめです」(飯島店長)。別のモデルには1万円を切るものもあります。プレーヤーとスピーカーをケーブルでつなぐことなく、無線通信で機器に接続できるモデルも増えています。アナログとデジタル技術が合わさることで、CDにも馴染(なじ)みがない若い世代も巻き込んで静かなブームを生み出しているといえそうです。

では、肝心のレコードは? 中古盤を中心に掘り出し物を見つけるのも楽しみの一つ。サザンオールスターズ、松任谷由実、井上陽水、松田聖子…。現在も活躍中のアーティストのレコードがあり、福岡天神ワンビル店には福岡ゆかりのミュージシャンの楽曲を集めたコーナーもあります。レコードの状態に応じて「コンディション」が明示されています。商品ラインアップは1枚550円からあるそうです。

人工知能でメロディー生成、円盤化!
デジタルとアナログを融合させるイベントも。最新のデジタル技術を体験できる「FUKUOKA DIGITAL DAYS 2025」(西日本フィナンシャルホールディングスなど主催)が10月5日に福岡市内で開かれました。このうち、端末上でいくつかの質問に回答すると、自動で生成された歌詞にメロディーがつけられ、世界に一つだけのオリジナルソングが出来上がるコーナーが人気を集めました。人工知能(AI)を活用したツールによる取り組みです。

完成した楽曲は「カッティングマシーン」と呼ばれる機械でアナログレコードに溝が彫られ、事前予約した家族連れには家族写真からつくられたイラストのジャケットをつけてプレゼント。イベントに参加した人たちは、レコード盤を作る珍しい光景に見入っていました。デジタル技術で生み出された音楽が、アナログな姿に形を変えるというユニークさもあり、参加者募集が始まってすぐに定員に達したそうです。

「レコードはジャケットが大きくて飾れるのも魅力の一つです」と、フェイスレコード福岡天神ワンビル店の飯島英大店長。
Face Records TENJIN ONE FUKUOKA BLDG.
フェイスレコード 福岡天神ワンビル店
住所:福岡市中央区天神1-11−1
ONE FUKUOKA BLDG. 2階
電話:092-401-5720
営業:平日 11:00〜20:00
土日祝 10:00〜20:00
URL:https://www.instagram.com/facerecordsfukuoka/
※2025年10月17日号掲載


