Re:祖母が語った不思議な話・その肆拾(40)「桃の使い」

私が小さい頃、明治生まれの祖母はちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。祖母の思い出とともに少しずつアップしていきます。
※「祖母が語った不思議な話」シリーズは現在も連載中ですが、サーバー変更にともない初期の話が消えてしまったので、再アップしていきます。

イラスト:チョコ太郎(協力:猫チョコ製作所)

祖母が7歳の春、隣村の叔母の家へ引っ越しの手伝いをするために母親と出かけた。
あちこちに咲く桃の花を眺めながらの道行きは楽しく、気がつくと隣村だった。

着いた時には引っ越しの準備はほぼ終わっており、ほんの少し手伝うとお昼ご飯になった。
大好きなちらし寿司を食べ終えた祖母は村の散策に出かけた。

小川に脚を浸けたり花を摘んだりしながらしばらく行くと、庭に見事な桃の花が咲いている家があった。
ふと見ると入口に同じ年頃の女の子がいて手招きしている。
誘われるままに中に入ると女の子は奥へと走っていく。
祖母は少し躊躇(ちゅうちょ)したが、思い切って後を追った。

襖を開けるとそこは広い座敷で、真ん中に見事なお雛様が飾られていた。
しばらくあっけにとられていたが、不思議なことに気がついた。
部屋に雛人形以外のものが一切無いのである。

それどころか先に上がったはずの女の子もおらず、他の人の気配もない。
急に気味悪く感じ、急いで外に出ると心配そうな母と叔母がいた。

「まさかとは思ったけど、ここにいるとは」
叔母だった。

なんでもこの家には年老いた夫婦が住んでいたが昨年二人とも亡くなり、住む人もないため近いうちに取り壊すことになっているそうだった。
本当にお雛様があったのか確かめに戻りたかったが、日が暮れる前に帰ろうと母に急かされたため後ろ髪ひかれる思いでその家を後にした。

「あら?」

家に帰ってから頭になにかが着いているのに気がついた。
それは桃の花びらだった。

………………………………………………………

「お雛様が寂しくて私を呼んだのかな。桃の季節が来る度に思い出すよ」
話し終わった祖母は目を細めた。

チョコ太郎より

サーバーの変更で初期話が消えてしまったので、あらためて読めるようにアップしていきます。
また、「続、新・祖母が語った不思議な話」も連載中ですので、ご希望や感想、「こんな話が読みたい」「こんな妖怪の話が聞きたい」といった声をぜひお聞かせください。
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