私が小さい頃、明治生まれの祖母はちょっと怖くて不思議な話をたくさん聞かせてくれました。祖母の思い出とともに少しずつアップしていきます。
※「祖母が語った不思議な話」シリーズは現在も連載中ですが、サーバー変更にともない初期の話が消えてしまったので、再アップしていきます。

祖母が8歳の冬、家族で山口県に旅行に出掛けた。
蒸気機関車に乗り、駅弁を食べ、到着まで大いに楽しんだ。
駅に着き老舗の温泉宿を訪ねるとすでに満室。
あちこち訪ねたあげく、すこし離れた新しい旅館に泊まる事になった。
そこは檜の香りのする建てられて間もない宿なのに他に客はいなかった。
「こんなにきれいな宿なのになぁ…」
祖母は少し不思議に思った。

夕食は山海の幸をふんだんに使った豪華なもので家族みんな大満足だった。
お腹がふくれた祖母はいつしか眠ってしまった。
「みんなもうお風呂に入ったよ。あなたも入っておいで」と母に起こされたのは10時くらいだった。
大浴場には誰もおらず、とても気持ちが良かった。
お湯を満喫し部屋に帰ろうとすると露天風呂の方で子どもたちの笑い声がする。
「やっぱり他にも泊まってたんだ!」納得しながら部屋に帰った。
さあ眠ろうという時、ぼそぼそと話す女の人の声や子どもの泣き声が聞こえてきた。
「お母さん、お母さん!変な声が聞こえるよ」と祖母が言うと
「ちょっと見てくるね」と祖母の母は部屋を出て行った。

しばらくして母が帰ってきた。
「どうだった?」そう聞くと「寝なさい」とだけ言う。
ふとんに入って祖母を抱きしめた母の体は震えていた。
翌朝、支払いを終えるのを旅館の前で待っていると通りかかった中年の女性が近づいてきた。
「この旅館はやめときな!ここが建つ前、古い宿だったんだけどいろいろあってね…しばらく廃屋になっていたんだ。でもお湯が出るだろ?だからよそから来たご主人が新しく旅館を始めたんだけど、やっぱり良くないことが止まらなくてね。お嬢ちゃん、泊まっちゃだめだよ」
そう言うと足早に立ち去った。






チョコ太郎より
初期話が消えてしまったので、あらためて読めるようにアップしていきます。また、「新・祖母が語った不思議な話」も連載中ですので、ご希望や感想、「こんな話が読みたい」「こんな妖怪の話が聞きたい」「こんな話を知っている」といった声をぜひお聞かせください。一言でも大丈夫です!下記のフォームからどうぞ。
