他愛もない子どもとの会話に、ある日突然「聞いたことのない名前」が出てきたら…。そして、それがつかみどころのない正体不明の人物だったら…。秋の夕暮れの保育園帰り、3歳の長男の話に振り回されてしまった私の勘違い体験をご紹介します。
3歳息子に新しいお友達?

毎日元気に保育園通いをしている長男。
登園時は夫が、降園時は私が徒歩で送り迎えしています。私にとっては、保育園からの帰り道に長男と手をつないでゆっくり歩きながら「今日保育園であったこと」を聞くのが楽しみの一つとなっていました。
ある日のこと、いつものように保育園から自宅までの道のりを歩いていると、
「きょう、おさんぽしてたらタカシにあったよ!」と、長男が嬉しそうに教えてくれました。
タカシ? あれ?そんなお友達、保育園にいたっけ?
始めて聞く名前だけど、もしかしたら、最近できた新しいお友達?ちょっと疑問は残るものの
「そっかー、よかったね!」と、長男に話を合わせ、その話題はそこで終わっていました。
でも、その日以降、なぜかタカシ君は頻繁に長男の会話に登場するようになったのです。
「きょうおさんぽいったらね、タカシがこっちをずっとみてたんだー」
え…?子どもたちを、ずっと見てた?長男のその言葉になんとなく違和感を覚えた私。
「タカシ君って、保育園のお友達?」 念のため、長男に確認してみると、
「ちがうよー。タカシはね、おさんぽのときにあうだけ!」 じゃあ、保育園の近くに住んでいる人?と重ねて聞いてみましたが、「分からない」とのこと。
「タカシって誰?!」「もしかして、不審人物?! 」子どもを狙った悪質な犯罪が増えてきている昨今、急に心配になってきた私でしたが、長男は相変わらず毎日のようにタカシ君の話をしてくれます。
「タカシはねー、わるものがこないようにいつもみはってるんだよ」
ますます深まる「タカシ」の謎

「え?!タカシっていい人なの??」 びっくりして思わず大きな声を出してしまった私に対して、長男は得意そうに言いました。
「そうだよ!タカシはえらいんだよ!」
私はますますタカシの正体が分からなくなって、混乱状態。
「タカシって一体何してる人なの?!」「万一のことを考えて、保育園の先生たちにタカシのことを伝えておくべき?」1人悶々と悩みました。
それから数日後。保育園からの帰りに
「たまには違う道を通って帰ろう!」と、普段通らない道を歩くことにした私たち。
いつものように手をつないで歩いていると、長男が突然私の袖を引っ張りました。
「あ、みて!タカシだ!」
「えっ!タカシ?!どこ?!」
私がこれでもかというほどのスピードで長男の指す方を振り返ってみると、そこにいたのは…。
『タカシ』はこのことだったのか!

稲穂揺れる田んぼの中に立つ「かかし」。
あ、「かかし」ね…。
『タカシ』の正体にやっと気づくことができた私は、思わず脱力。確かに、長男の言っていた「タカシ君」の特徴にぴったり当てはまっています。
タカシが心配していたような不審者じゃなくて本当にほっとしたのですが…。
勝手にイメージを膨らませ、あやうく保育園を巻き込みかけた自分の視野の狭さにもびっくりだった出来事でした。
(ファンファン福岡一般ライター)





