私の祖父が天国へと旅立ちました。いざ会いに行かんと急ぐも、旅路は新幹線で4時間。3歳になったばかりの息子ハルくんと2歳の姪っ子ももちゃんを連れて新幹線での4時間耐久レースが始まるのでした…。
祖父が天国へ

「おじいちゃん、亡くなったけぇ帰っておいで」伯母から母に連絡があったのは初夏、まだ涼しさが感じられる夜遅くのことでした。伯母から連絡を受けた母は、私と姉に震える手で電話をかけたといいます。
翌日の昼間に私と息子、姉と姪っ子、母の5人で岡山へ向かう新幹線に乗り込むことになりました。夜な夜な荷物を詰めながら祖父との記憶を辿り目頭を熱くします。ふと、「ハルくん、新幹線どうやって過ごすんだ?」泣いている場合ではないことに気がつきました。
新幹線に乗る前からクタクタ

ハルくんはもちろんのこと、姪っ子も人生で一度も新幹線に乗ったことがないのです。それも初めてにして4時間。ネットで「新幹線 暇つぶし おもちゃ」と検索。翌朝、子ども用品店へ開店時間に駆け込み、音のならないおもちゃをいくつか仕入れ、とりあえず荷造りが完了しました。
前日は夜中まで準備、気が落ち着かないままなかなか寝つけず寝不足。朝はソワソワして目が覚め、そのままバタバタと準備してここまで来たので既に疲労困憊です。
いざ初乗車!

キャリーケースにリュックや手提げ、大荷物で新幹線に乗り込みました。一番大事な子どもを忘れないように、手をしっかり握りしめ乗り込みます。
ホッとしたのも束の間
「ハルくんおしっこしたい!」ハルくんの手を引き、いそいそとトイレへ向かいます。無事に済ませ席へ戻ると
「イヤなのー!!」今度は姪っ子のももちゃんが床へ突っ伏しています。何事かと話を聞くと、突然きている服が気に入らなくなったよう。
ももちゃんをなんとかなだめ、時刻はすっかり12時。パンやおにぎり、お弁当を広げてようやく昼食です。喧嘩をしないよう、同じパン、同じおにぎりを二つずつ用意して渡しました。
「おいしいねえ」「おーしーねー」2歳と3歳の会話に笑みが溢れながらも、急いでご飯をかき込みます。
最後の一口を飲み込んだところ
「それハルくんの!」
「ももちゃんの!」さあ、口論が始まりました。
「同じの二つあるでしょ?!なんで?」と止めに入ると、どうやらパッケージの違い。たかがパッケージ、されどパッケージ。仕方がないのでティッシュの上にパンを広げ、2人とも袋なしで乗り切ります。乗車から1時間が経った頃、ハルくんはお気に入りの毛布を握りしめお昼寝。
「イヤ!ねんねイヤ!」問題はももちゃん。彼女は昼寝拒否タイプ。何がなんでも遊んでやると両手におもちゃとクレヨン。
「お散歩行こっか」姉は寝不足でウトウトしていたので、ももちゃんを連れてデッキに出ました。
平日のお昼時、デッキに人はおらずしばらくももちゃんと外を眺めたり歩いたりとお散歩を楽しみました。
ももちゃんが落ち着いた頃に抱っこでうとうと。そっと席へ戻ると、満面の笑みでお菓子を頬張る寝起きのハルくんが待ち構えていました。うとうとしていたももちゃんも、お菓子を見つけてハルくんの手から奪い取りデッキへと脱走します。
「あ!ハルくんの!」車内にハルくんの声が響きます。
「しー!ももちゃんのもあるから、ハルくんにおやつ返して!」小声で、かつ必死にももちゃんを連れ戻します。素早くももちゃんのお菓子をハルくんに返し、なだめます。「もう!喧嘩はやめてくれ!」と心の中で叫んでいました。
なんとか無事到着
こうしてなんとか4時間の乗車を乗り越えて、無事に岡山に到着。げっそりしながらもホテルへ転がり込みました。ここにきてふと、祖父のことを思い出します。祖父のことを思い涙を流す暇などなくここまできたのです。
きっと大人だけだったら寂しさでどうしようもなくここまでやってきたことでしょう。ベットの上を飛び跳ねるハルくんをギュッと抱きしめました。翌日、お通夜で無事に祖父とお別れをすることができ、親戚とも久しぶりの再会を果たしました。
そして私たちは3日後…再び子どもたちを連れて、新幹線4時間の耐久レースに挑むのでした。
(ファンファン福岡公式ライター/「もずく」)


